
賃貸住宅で親族が孤独死すると、原状回復費用や遺品整理費用がどれくらいかかるのか、相場感がまったくわからないまま業者からの見積もりを待つことになります。日本少額短期保険協会の保険金支払データでは、原状回復費用の平均損害額は494,344円、遺品整理(残置物処理)費用の平均損害額は294,131円です。
ここでは、保険金の支払実績にもとづく実際の損害額を、原状回復・遺品整理・発見までの日数の関係から整理します。発見後の動き方や、特殊清掃と遺品整理のどちらを先に進めるかは親が孤独死したら、遺品整理はどう進める?にまとめているので、ここでは「まず金額の相場を知りたい」という読者のために、データの中身に絞って解説します。
このデータは、業者が自己申告する相場表ではなく、少額短期保険協会に加盟する保険会社が実際に支払った保険金の実績から集計されています。そのため、見積書の金額が相場とかけ離れていないかを確認するときの、ひとつの目安として使えます。
孤独死の原状回復費用、平均は約49万円
日本少額短期保険協会の「第10回 孤独死現状レポート」は、孤独死にともなって支払われた保険金の実績データをもとに損害額を集計しています。2015年4月〜2025年3月の累積(異常値を除く)でみると、賃貸住宅での原状回復費用の平均損害額は494,344円です。
2024年度単年のデータだけを取り出すと、平均は610,507円まで上がっています。資材費や工事費の値上がりが影響しているとみられますが、レポートはその要因までは説明していません。累積・単年のどちらを見るかで印象が変わるため、本文では両方の数字を併記します。
原状回復費用には、床や壁の解体・張替といった工事費が含まれます。工事の範囲がどこまで広がるかは、次に説明する発見までの日数によって変わってきます。
見積書を受け取ったときは、この平均額(累積494,344円・2024年度単年610,507円)を単純な「上限」や「相場の天井」として扱わないことが大切です。あくまで多数の事例をならした平均であり、建物の構造や汚染の範囲によって、個別の金額はこの平均の上下に大きく振れます。
遺品整理(残置物処理)費用の平均は約29万円
原状回復とは別に集計されているのが、遺品整理(残置物処理)費用です。残置物処理とは、家具・家電・生活用品など、部屋に残された物をすべて運び出して処分する作業のことです。同じレポートによると、平均損害額は294,131円(累積)、2024年度単年では266,265円でした。
原状回復費用とは逆に、2024年度単年の数字のほうが累積平均よりも下がっています。年度によって増減の方向が一致しないことからも、どちらの数字も「ある時点・ある集計範囲での平均」であり、個別の事例にそのまま当てはまるわけではないことがわかります。見積もりを取るときは、この平均額を目安にしつつ、必ず現地での金額を確認してください。原状回復(工事)と遺品整理(搬出・処分)は性質の異なる作業のため、見積書の中でこの2つが分けて記載されているかも、あわせて確認しておくと金額の内訳が把握しやすくなります。
原状回復・遺品整理のどちらも平均で見てきましたが、個別の事例では平均を大きく上回ることがあります。
累積データの中には最大756万円を超える事例も
累積データの中には、原状回復費用だけで最大7,564,673円という事例が含まれています。平均額の494,344円と比べると、15倍以上の差があります。
この最大値がどのような状況で発生したのか(発見までの期間、建物の構造、工事の範囲など)について、レポートは詳細を公表していません。あくまで「平均から大きく外れる事例が実際に存在する」という事実として受け取り、見積もりの際は上限のイメージも持っておくことをおすすめします。
見積もりの金額が平均から大きく外れていて不安なときは、その場で判断を急ぐ必要はありません。相談フォームから見積書の内容や状況をお送りいただければ、進め方のめやすをお伝えします。
なぜこれほど差が出るのか。次に、発見までの日数との関係を見ていきます。
発見までの日数が長いほど、費用は上がりやすい
同じ累積データでは、孤独死の発生から発見までの平均日数は19日でした。内訳をみると、3日以内に発見された割合は37.0%、一方で**90日以上かかった割合は3.5%**です。早く見つかるケースが4割近くを占める一方、3か月以上たってから見つかるケースも一定数あることがわかります。
レポート自体は発見日数と費用の金額を直接結びつけた数字を示していませんが、発見が遅れるほど体液や臭いが床・壁の下地まで染み込みやすくなることは、特殊清掃とはでも説明している作業の性質上避けられません。この傾向から、発見までの日数が長いほど原状回復費用は上がりやすいと考えられますが、因果関係を断定する統計ではない点には注意してください。
発見日数のデータを見たところで、集計そのものの前提を確認しておきます。
このデータの前提(期間・対象)
ここまで引用した数字は、日本少額短期保険協会が2015年4月〜2025年3月の累積(異常値を除く)で集計したものです。同協会が2022年6月に金融庁の会議へ提出した別の資料では、2015年4月〜2021年3月を対象期間として、発見までの日数は3日以内が39.4%、平均17日という数字を示しています。
対象期間が異なるため、発見日数の平均値は19日と17日で一致しません。どちらかが誤っているわけではなく、集計の対象期間が違えば数字も変わるということです。本記事で提示している金額・日数は、いずれも「ある期間に支払われた保険金の実績」にもとづく平均・累積の値であり、個別の住戸にそのまま当てはまる保証はありません。見積もりの参考値として使い、実際の金額は現地調査にもとづく見積書で確認してください。
また、これらの数字は少額短期保険協会に加盟する保険会社が支払った事例の集計であり、保険に入っていなかったケースや、他社の保険で処理されたケースは含まれていない可能性があります。日本全国の孤独死すべてを網羅した数字ではなく、保険金が支払われた事例に限った平均・累積だという前提も、あわせて押さえておいてください。
ここまでの数字を踏まえて、最後に費用を誰が負担するのかの入口を整理します。
費用を誰が負担するか・保険の対象になるかは
ここで示した金額は「どれくらいかかるか」の相場感です。実際に誰が払うのかは、賃貸か持ち家か、連帯保証人がいるか、孤独死保険に入っているかによって変わります。
賃貸の場合、原則として費用を負担するのは相続人です。連帯保証人がいれば、貸主はそちらにも請求できます。大家や入居者が孤独死保険(少額短期保険)に入っていれば、原状回復費用や遺品整理費用の一部が補償されることがあります。持ち家の場合は、貸主との精算という話はありませんが、負担するのは同じく相続人です。
負担の区分や相続放棄との関係は親が孤独死したら、遺品整理はどう進める?、賃貸の退去手続きと原状回復の負担区分は賃貸の遺品整理と退去で詳しく説明しています。特殊清掃そのものの作業内容や、業者ごとの料金のめやすは特殊清掃とはを参照してください。
見積もりを取る段階では、本記事で示した平均額を目安にしつつ、必ず2〜3社から相見積もりを取ってください。原状回復(工事)と遺品整理(搬出・処分)、特殊清掃(消臭・除菌)が項目ごとに分けて記載されているかを確認すると、どこにいくらかかっているのかが把握しやすくなります。
基本情報のまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原状回復費用(平均・累積) | 494,344円(2024年度単年は610,507円) |
| 遺品整理・残置物処理費用(平均・累積) | 294,131円(2024年度単年は266,265円) |
| 原状回復費用の最大損害額(累積) | 7,564,673円 |
| 発見までの平均日数 | 19日(別集計では17日。集計期間により異なる) |
| 3日以内に発見された割合 | 37.0%(別集計では39.4%) |
| 90日以上かかった割合 | 3.5% |
| 出典 | 日本少額短期保険協会「孤独死現状レポート」(保険金の支払データ) |
数字だけを見ても、自分の状況にどこまで当てはまるのか判断がつかない、見積もりの金額が相場より高いのか不安だ、というときは、状況(賃貸か持ち家か、発見までの期間、保険の有無)を相談フォームからお送りください。費用の負担者や進め方の整理は親が孤独死したら、遺品整理はどう進める?、賃貸の退去手続きは賃貸の遺品整理と退去もあわせてご覧ください。
よくある質問
孤独死の原状回復費用は平均いくらですか?
日本少額短期保険協会の集計(2015年4月〜2025年3月の累積、異常値を除く)では、賃貸住宅での原状回復費用の平均損害額は494,344円です。2024年度単年でみると610,507円まで上がっています。
遺品整理(残置物処理)の費用は平均いくらですか?
同じ集計で、遺品整理(残置物処理)費用の平均損害額は294,131円(累積)です。2024年度単年では266,265円でした。
最大でどれくらいの費用になった事例がありますか?
累積データの中には、原状回復費用だけで最大7,564,673円という事例が含まれています。平均額はあくまで目安で、個別の事例ではこれを大きく超えることがあります。
発見が遅れると、費用は必ず高くなりますか?
必ず高くなるとは言えませんが、傾向としては発見が遅れるほど費用が上がりやすいとされています。同じ集計では、発見までの平均日数は19日、3日以内に発見された割合は37.0%、90日以上かかった割合は3.5%でした。
この費用は誰が払うのですか?保険で補償されますか?
賃貸では原則として相続人が負担し、連帯保証人がいれば貸主はそちらにも請求できます。大家や入居者が孤独死保険などに入っていれば、一部が補償されることがあります。負担の区分や相続放棄との関係は、別記事で詳しく整理しています。


