
実家や親の家を片付けていて、押し入れや蔵から日本刀が出てくることがあります。刀は所持しているだけで違法になるのではと不安になりがちですが、確認することは一つです。「銃砲刀剣類登録証」が刀と一緒に保管されているかどうかです。登録証があれば、相続で受け継いだ場合も20日以内に届出をすれば引き続き所持できます。ないときは、動かさずに警察署へ連絡します。
ここでは、文化庁と福井県の案内、銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)の条文にもとづいて、登録証がある場合とない場合の手続きを分けて整理します。売る・手放すかどうかの判断は、まず手続きを終えてからで構いません。
まず確認するのは「銃砲刀剣類登録証」があるかどうか
刀剣類は、銃刀法で原則として所持が禁じられていますが、美術品として価値のある刀剣類は、文化財に準ずるものとして保護・活用するため、銃刀法上の**「登録」**を受けることで例外的に所持が認められています。登録された刀剣類は誰でも所持でき、登録証はいわば刀の身分証にあたります。
登録を受けた刀剣類を所持・携帯・輸送したり、譲渡や保管の委託をしたりする際には、必ず登録証と一緒に行う必要があります。まずは刀の鞘や箱、桐箱の中、あるいは一緒に保管されている書類の束の中に、登録証(証明写真のような紙片で、刀の種類・銘・長さなどが記載されたもの)がないかを確認してください。
登録証が見つかった場合と見つからない場合とでは、この先に進む手続きがまったく違います。次の章から、それぞれの流れを見ていきます。
登録証がある場合|相続したら20日以内に所有者変更届
登録証が見つかった場合、その刀はすでに合法に登録されているため、そのまま所持を続けられます。ただし、相続によって刀の所有者が変わったときは、届出が必要です。
銃刀法第17条は、「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続により取得した者は、二十日以内にその旨を当該登録の事務を行った都道府県の教育委員会に届け出なければならない」と定めています。届出先は、今住んでいる都道府県ではなく、登録証を発行した都道府県の教育委員会です。福井県内で登録された刀であれば、福井県教育庁生涯学習・文化財課が窓口になります。
福井県の案内では、「所有者変更届」と登録証の写し(記載内容が判読できるもの)を、生涯学習・文化財課まで持参または郵送で提出するとされています。問い合わせ先は生涯学習・文化財課(電話0776-20-0558、福井市大手3丁目17-1)、受付時間は平日8時30分から17時15分です。
登録証を発行した都道府県が分からない場合は、まず住所のある都道府県の教育委員会に問い合わせると案内を受けられます。20日という期限を過ぎていても、まずは登録証に記載の教育委員会に相談してください。次に、登録証が見当たらなかった場合の手続きを見ていきます。
登録証がない場合|動かさず最寄りの警察署へ発見届
登録証が見つからない場合は、対応が変わります。文化庁の案内では、「登録証のついていない銃砲刀剣類を発見した場合には、すみやかに最寄りの警察署に届け出る必要があり、まずは最寄りの警察署までご連絡いただき、その後に必要な手続きについて指示を受けてください」とされています。銃刀法第23条も、刀剣類を発見・拾得した者は速やかに最寄りの警察署へ届け出るよう定めています。
福井県の案内では、「銃砲刀剣類を発見した地域の警察署に『発見届』を提出して、『発見届出済証』の交付を受ける」流れが示されています。発見届を出すと、後日「登録審査についてのお知らせ」と「登録申請書」が送られてくるので、必要事項を記入し、住所地の都道府県の窓口(福井県なら生涯学習・文化財課)へ提出します。
福井県警察の発見届の具体的な窓口や持参物までは今回確認できていないため、この段階では最寄りの警察署に連絡し、指示を受けるところまでにとどめてください。無登録での所持がどの程度の問題になるかを自己判断せず、警察の指示に従うのが確実です。発見届を出したあとに進む登録審査会について、次の章で詳しく見ていきます。
福井県の登録審査会の流れ(予約制・持ち物・手数料6,300円)
発見届を出すと、住所地の都道府県の登録審査会に進みます。福井県の登録審査会は予約制で、希望する場合は事前に福井県教育庁生涯学習・文化財課へ電話で予約します。
審査会当日の持ち物は次の6点です。
- 銃砲刀剣類(現物)
- 発見届出済証
- 通知文書
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、個人番号カードなど)
- 登録審査手数料 6,300円(手数料納付システムにて納付)
- 委任状(登録審査会に参加する人が所有者と異なる場合)
審査の結果、登録できると判断された場合は、審査会当日に登録証が交付されます。登録手続きは現住所がある都道府県で行えるため、実家が福井県外にあっても、今の住所が福井県であれば福井県の審査会で手続きできます。審査手数料は1件につき6,300円で、刀剣類が複数あれば本数分かかります。登録できなかった場合でも、この手数料は返還されません。
福井県の審査会は日程・会場が固定ではなく、年に数回開催される形式です。最新の日程や会場は変更される場合があるため、必ず福井県のページか生涯学習・文化財課(電話0776-20-0558)で確認してください。審査を終えて無事に登録証を受け取った場合、以後はその登録証と刀を一緒に扱います。続いて、登録証を後から紛失してしまった場合の手続きを見ていきます。
登録証をなくしたとき|再交付と「新規登録になる」ケース
すでに登録済みの刀の登録証を紛失した場合も、手順が決まっています。福井県の案内では、まず福井県教育庁生涯学習・文化財課に電話をして、福井県に登録されているかを確認します。登録の確認ができたら、最寄りの警察署で遺失届の手続きをします。
その後の扱いは、記録が確認できるかどうかで分かれます。
- 登録原票とデータが一致した場合 後日、登録証が再交付されます。再交付手数料は3,500円です
- どこにも該当する登録が見つからなかった場合 在住地である福井県で新規登録扱いになります。登録申請書の提出と、新規登録手数料6,300円が必要です
紛失に気づいたら、自己判断で放置せず、早めに教育委員会へ連絡してください。ここまでは登録証がある前提の手続きでしたが、次は審査の結果、登録が認められなかった刀の扱いを見ていきます。
登録できなかった刀・引き継がない刀はどうする
登録審査会で登録できないと判断される刀剣類もあります。文化庁の案内によれば、戦時中に作られた無鍛錬の刀剣や刃文のないもの(いわゆる武器として扱われるもの)には登録証が発行されず、刀身は廃棄の対象になります。ただし、戦時中に製作されたものでも、美術品として価値が認められれば登録は可能とされています。刀が登録できるかどうかは、登録審査委員の鑑定によって判断されるため、記事の中で「これは登録できる・できない」と判定することはできません。
登録できなかった場合、福井県の案内では最寄りの警察署で破棄手続き等を行うとされています。文化庁の案内には、もう一つの選択肢も示されています。
- 自分で所持を希望する場合 銃刀法第4条に規定する所持許可を受ける必要があり、住所地の都道府県の公安委員会に相談します
- 手放したい場合 国公立の博物館等へ寄贈する方法もあります(私立の博物館等は対象になりません)
引き継ぐかどうか迷う刀が複数ある実家では、まず発見届に出して審査会で判断してもらい、そのうえで所持・寄贈・処分を検討する進め方が現実的です。相続放棄を検討している場合、刀剣類の売却・処分も「相続財産の処分」に当たりうるため、詳しくは相続放棄の基礎知識を確認してから動いてください。
遺品整理の現場で刀を見つけたときの注意
刀は、押し入れの奥、床の間の刀掛け、蔵、車庫の棚の奥など、片付けの終盤で見つかることが多い品目です。公益財団法人日本刀文化振興協会は、発見時の注意として次の点を挙げています。
- 場所を動かさず、そのままの状態に置いておく 勝手に持ち出したり、別の部屋に移したりしない
- 登録審査を受けるまでは研ぎに出さない 手入れのつもりで研ぎに出すと、審査前に状態が変わってしまう
遺品整理・不用品回収業者に片付けを依頼している場合も、刀剣類は業者のトラックに積ませないでください。所持・運搬そのものに手続きが必要な特殊品目のため、見つかったら作業を一旦止めて家族と共有し、登録証の有無を確認してから警察署または教育委員会に相談します。品目ごとの処分方法全般は遺品の処分方法(品目別)、自分で仕分けを進める手順は遺品整理を自分でやる手順にまとめています。
刀を訪問買取業者に売る話を持ちかけられることもありますが、登録証の確認や所有者変更を済ませる前に応じる必要はありません。訪問購入の手口や断り方は出張買取・押し買いの注意点を参考にしてください。
福井で手続きに迷ったら
登録証がある場合は登録証を発行した都道府県の教育委員会(福井県なら生涯学習・文化財課)へ、登録証がない場合はまず最寄りの警察署へ、というのが基本の分かれ道です。福井県教育庁生涯学習・文化財課(電話0776-20-0558)が窓口です。審査会は予約制のため、日程や持ち物は事前に電話で確認してください。
刀を売る・手放すかどうかは、登録証の手続きを終えてから検討して構いません。売れる可能性のある遺品全般については遺品の買取にまとめています。実家の片付け全体の進め方や、刀以外の品目の扱いで迷うことがあれば、状況を相談フォームからお送りください。進め方のめやすをお伝えします。
よくある質問
実家で日本刀が出てきたら、まず何をすればいいですか?
まず「銃砲刀剣類登録証」が刀と一緒に保管されていないか確認します。登録証があればそのまま所持でき、相続で取得した場合は20日以内に登録証を発行した都道府県の教育委員会へ所有者変更届を提出します。登録証が見当たらない場合は、刀を動かさず、最寄りの警察署へ連絡して指示を受けてください。
登録証の発行県と今住んでいる県が違う場合はどうすればいいですか?
所有者変更届の提出先は、今の住所地ではなく登録証を発行した都道府県の教育委員会です。発行県が分からない場合は、まず住所のある都道府県の教育委員会に問い合わせると案内を受けられます。
登録証の名義が祖父のまま変更されていません。どうすればいいですか?
名義変更をしないまま所持すること自体を禁じる規定は本記事で確認した一次情報にはありませんが、銃刀法は譲り受けや相続の際に届出を義務づけています。気づいた時点で、登録証に記載の都道府県教育委員会(分からなければ住所地の教育委員会)に相談し、所有者変更届の手続きを進めてください。
軍刀らしきものが出てきました。登録できますか?
戦時中に作られた無鍛錬の刀剣や刃文のないものは登録証が発行されず、刀身は破棄の対象になります。ただし戦時中に製作されたものでも、美術品として価値が認められれば登録は可能です。判断は登録審査委員の鑑定によるため、まず発見届を出し、登録審査会で確認してもらいます。
刀を売るときも登録証の届出は必要ですか?
はい。登録を受けた刀剣類を譲渡するときも、登録証と一緒に扱う必要があります。売却先や買取方法の比較は[遺品の買取](/column/ihin-kaitori)にまとめています。まず所有者変更の手続きを済ませてから、売る・手放すかを検討してください。


