ゴミ屋敷の条例と行政の対応|通報先・指導・代執行のしくみ

公開:2026.09.16更新:2026.09.16杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
ゴミ屋敷の条例と行政の対応|通報先・指導・代執行のしくみのイメージ

「隣の家がごみで溢れているが、行政は動いてくれるのか」「自分の家が指導の対象になったらどうなるのか」——ゴミ屋敷について検索する方の多くは、条例の実効性と、自分がどちらの立場に立つかで不安の中身が違います。

先に結論を言うと、ゴミ屋敷そのものを直接規制する全国共通の法律はありません。対応の枠組みは自治体ごとの条例に委ねられており、環境省の令和6年度調査では、条例を制定済みの市区町村は全国でも90(5.2%)にとどまります。福井県内で条例を制定している市町村は0です。

ここでは、条例がある場合とない場合で行政の対応がどう変わるか、通報・相談の窓口、近隣として気をつけたいこと、自分や家族が指導を受けそうなときの動き方を、環境省の調査と福井市の情報にもとづいて整理します。レベルの見極めはゴミ屋敷のレベルとは、親の実家が対象なら実家がゴミ屋敷になっていたら?にまとめています。

「ゴミ屋敷」を直接規制する法律は無い(条例は自治体ごと)

「ごみ屋敷」という言葉そのものに、全国共通の法的な定義はありません。環境省の令和6年度調査(全国1,741市区町村が回答、回答率100%)によると、ごみ屋敷対策を目的とした条例等の制定状況は、**制定済み90市区町村(5.2%)、制定予定なし1,589(91.3%)、検討中59(3.3%)**です。大多数の自治体には、専用の条例がありません。

条例を持つ自治体では、ごみ屋敷を次のように定義しています。

住宅等において、ごみその他の物品が堆積し、又は散乱した状態であって、悪臭もしくははえ、ごきぶりその他の害虫が発生し、又は当該物品の崩落もしくは火災発生のおそれがある状態その他の生活環境が著しく損なわれている状態

物の量や高さで機械的に線引きするのではなく、堆積が原因で悪臭・害虫・崩落・火災のおそれが生じ、生活環境が著しく損なわれているかという状態で判断される点が共通しています。条例が無い自治体では、この条例による強制力そのものが使えません。

条例がある自治体・ない自治体(福井県の状況)

条例の有無は都道府県・市町村でばらつきが大きく、福井県内で条例を制定している市町村は0です。これは、環境省の令和6年度調査で明らかになった一次データです。

条例が無いからといって、行政が一切対応しないわけではありません。次のセクションで見るように、条例が無くても相談・助言・支援機関との連携という形で行政は関わります。ただし、条例に基づく勧告・命令・行政代執行のような強制力のある手続きは、条例が無い自治体では使えない点は押さえておく必要があります。

条例がある場合の流れ(現地確認→助言・指導→勧告→命令→行政代執行)

ゴミ屋敷への行政対応の段階

条例を持つ自治体でも、いきなり強制撤去に進むわけではありません。一般的には、現地確認 → 助言・指導 → (条例に定めがあれば)勧告 → 命令 → 行政代執行という段階を踏みます。行政代執行は最後の手段で、実際に行われる例はまれです。

環境省の調査でも、対応内容の中心は**現地確認88.7%、原因者への直接指導・助言79.2%**でした。行政代執行のような強制的な手続きに至る前に、本人の同意を前提にした関わりで解決に向かうケースが多いことがうかがえます。福井県のように条例が無い自治体では、この段階のうち「勧告・命令・代執行」という条例に基づく手続き自体が存在せず、対応は現地確認と助言・指導、次に見る福祉連携が中心になります。

条例が無くても行政ができること(相談・助言、許可業者の紹介、福祉との連携)

条例が無くても、行政ができることは複数あります。環境省の調査で、改善につながった理由として挙げられているのは次のような内容です。

  • 原因者への助言・指導
  • 原因者の転居・死亡等
  • 関係部署・関係機関の連携による包括的支援
  • 地域の方や原因者の親族による清掃
  • 収集運搬許可業者を紹介した

生活が苦しい場合には、生活困窮者向けの「生活環境改善事業」という枠組みを使い、業者に居宅清掃を依頼し、撤去費用を保護費で支給する支援例も報告されています。つまり、条例による強制力が無くても、相談・助言・紹介・福祉との連携という形で、行政は関わりを持てます。この点を知っておくと、「条例が無いから何もしてもらえない」と諦める前に、相談する意味があると分かります。

どこに通報・相談するか

環境省の調査では、行政がごみ屋敷を把握する主なきっかけの89.6%は市民からの通報・情報提供でした。つまり、行政は近隣からの声で状況を知ることがほとんどです。

福井で相談する場合は、市民生活部 環境廃棄物対策課(福井市大手3丁目10-1 市役所別館4階、電話0776-20-5398、平日8時30分〜17時15分)が窓口です。他の市町村にお住まいの場合も、まずは役場の環境担当部署か市民生活の窓口に連絡すれば、担当につないでもらえます。

近隣として困っているとき(できること・できないこと)

近隣としてできること・できないこと

近所のごみ屋敷に困っている場合、感情が先に立ちやすいですが、次の点を分けて考えると動きやすくなります。

できること

  • 市の環境部署・生活衛生の窓口に相談する
  • 状況を写真で記録しておく(悪臭・害虫・崩落の危険など)
  • 自治会・民生委員に状況を共有する
  • 複数世帯でまとまって相談する(行政も対応の優先度を判断しやすくなります)

できないこと(避けるべき行動)

  • 敷地に無断で入る
  • 本人の許可なく勝手に片付ける・撤去する
  • 本人に強く迫る(かえって心を閉ざし、状況が長引くことがあります)

無断で敷地に立ち入ったり、物を勝手に処分したりすると、住居侵入や器物損壊といったトラブルに発展しかねません。悪臭・害虫の被害が大きい場合は、市の環境部署に加えて、保健所の環境衛生担当も相談先の一つです。保健所では、ゴキブリやネズミなど衛生害虫に関する生態や防除方法の相談を受け付けています。ゴキブリ・ネズミへの具体的な対処はゴミ屋敷のゴキブリ・ネズミにまとめています。

自分や家族が指導を受けそうなとき

自分の家、あるいは離れて暮らす家族の家が「対象になりそう」と感じたときは、責められているという受け止め方をする前に、支援につながる相談先を持つことが助けになります。

高齢の家族が当事者の場合、最初の相談先は地域包括支援センターです。厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置する機関で、高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を支援することを目的としています。片付けそのものを専門に行う窓口ではありませんが、暮らし全般の相談から入れる点が心強いところです。地域包括支援センターの使い方はこちらで詳しく解説しています。

前のセクションで見たとおり、行政が改善につながったと報告する理由の多くは、助言・指導や関係機関の連携、親族・地域による清掃でした。指導を受ける立場になったとしても、それは支援につながる入り口と捉え、早めに相談することが、結果的に負担を小さくします。片付けの具体的な手順はゴミ屋敷を一人で片付ける手順、親の実家が対象になっている場合の関わり方は実家がゴミ屋敷になっていたら?親を責めない相談の順番を参考にしてください。

福井で相談するなら

福井県内には、ごみ屋敷に特化した条例はありません(環境省の令和6年度調査で制定は0)。ただし、相談先が無いわけではなく、内容によって窓口が分かれます。

相談内容窓口連絡先
ごみの出し方・不用品回収業者について福井市 環境廃棄物対策課電話0776-20-5398(平日8時30分〜17時15分)
高齢の家族の暮らし全般・介護・福祉実家がある市町村の地域包括支援センター市町村の代表電話から案内を依頼
衛生害虫(ゴキブリ・ネズミ等)の相談保健所の環境衛生担当お住まいの管轄保健所

条例が無いことは、「行政に相談する意味が無い」ことを意味しません。市民からの通報・情報提供が、行政が状況を把握する主なきっかけになっている以上、まず声を上げることが最初の一歩です。どこに相談すればいいか迷う、近隣との関わり方で悩んでいる、というときは、状況を相談フォームからお送りいただければ、整理をお手伝いします。

よくある質問

ゴミ屋敷を規制する法律はありますか?

ゴミ屋敷そのものを直接規制する全国共通の法律はありません。対応の枠組みは自治体の条例に委ねられており、環境省の令和6年度調査では、条例を制定済みの市区町村は全国で90(5.2%)にとどまります。福井県内で条例を制定している市町村は0です。

ゴミ屋敷は行政が強制的に撤去してくれますか?

条例がある自治体でも、行政代執行(強制撤去)は最終手段で、実際に行われる例はまれです。環境省の調査でも、対応の中心は現地確認(88.7%)と原因者への直接指導・助言(79.2%)で、改善につながった理由の多くは助言・指導や関係機関の連携でした。

近所がゴミ屋敷です。どこに通報すればいいですか?

お住まいの市町村の環境担当部署に相談します。福井市の場合は市民生活部 環境廃棄物対策課(電話0776-20-5398、平日8時30分〜17時15分)です。環境省の調査でも、行政がごみ屋敷を把握する主なきっかけの89.6%は市民からの通報・情報提供です。

近隣としてできること・できないことは?

できるのは、市の環境部署への相談、状況を写真で記録すること、自治会・民生委員への共有、複数世帯での相談です。敷地に無断で入る、勝手に片付ける・撤去する、本人に強く迫るといった行動は避けてください。衛生害虫の相談は保健所の環境衛生担当も窓口の一つです。

自分や家族が指導を受けそうなときはどうすればいいですか?

責められている、と身構える前に、支援につながる相談先を持つことが大切です。高齢の家族の場合は、地域包括支援センター(市町村が設置する高齢者の総合相談窓口)が最初の相談先になります。生活が苦しい場合は、業者への依頼費用を公的支援でまかなえる事例もあります。

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