
帰省して実家のドアを開けたら、ものが積み上がって足の踏み場がない——そう気づいても、親に「片付けて」と言ってすぐに動いてもらえるとは限りません。本人が拒む、自覚がない、遠方で頻繁に通えない、という事情が重なりやすいためです。
環境省の令和6年度調査(全国1,741市区町村が回答)によると、直近5年度でごみ屋敷事案を認知している市区町村は672(約38.6%)にのぼります。福井県内の認知件数は7件ですが、改善に至った件数は0件でした。片付けそのものより、本人にどう関わり、どこに相談するかでつまずくケースが多いことがうかがえます。
ここでは、レベルの見極めや片付けの手順ではなく、親・実家という関係性の問題に絞って、責めずに動くための順番を整理します。
まず知っておくこと(片付けられない背景はさまざま)
「なぜ片付けられないのか」を、性格や怠慢のせいだと決めつけないことが出発点です。加齢による体力の低下、配偶者や友人を亡くした喪失体験、近所付き合いの減少による孤立など、背景は人によって異なります。医学的な診断や断定はできませんが、一つの理由に単純化できないという前提を持つだけで、次に取る行動が変わります。
「片付けなさい」と繰り返しても、本人にとっては責められていると感じるだけで、状況の理解にはつながりません。目指すゴールも、部屋を完璧に片付けることではなく、安全に暮らせる状態にすることと、本人との関係を保ちながら少しずつ進めることだと考えると、無理に急ぐ必要がなくなります。次のセクションで、関わり方の具体を見ていきます。
本人を責めない・捨てる約束を取り付けない
家族としてすぐ動きたい気持ちは自然ですが、次のような関わり方は、かえって片付けを遠ざけます。
- 黙って本人の物を捨てる
- 「汚い」「だらしない」と責める
- 一度に全部を片付けようとする
- お金だけ渡して業者を勝手に手配する
代わりに試したいのは、一緒に決める・困りごとから話す・使う部屋から少しずつ・支援機関を挟むという関わり方です。「探し物が見つからなくて困っていない?」「つまずいて危なくない?」など、暮らしの困りごとを起点に話すと、本人も自分ごととして受け止めやすくなります。捨てる約束を最初のゴールにしないことが、結果的に一番の近道です。
家族だけで話すと、どうしても感情的になりやすいものです。「一度、専門の窓口に一緒に話を聞いてもらわない?」と、第三者を間に入れる提案をするのも一つの方法です。本人にとっても、家族以外の人に困りごとを聞いてもらうほうが、身構えずに話せることがあります。
関係を壊さずに動けるかどうかが決まったら、次は相談先です。
最初の相談先は「地域包括支援センター」
家族だけで抱え込む前に、実家がある市町村の地域包括支援センターに相談します。厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置する機関で、高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行う、地域包括ケアの中核です。片付けを専門に行う窓口ではありませんが、暮らし全般の相談から入れる点が心強いところです。
センターの場所や連絡先が分からない場合は、実家がある市区町村の代表電話に「地域包括支援センターにつないでほしい」と伝えれば案内してもらえます。ケアマネジャーや福祉の担当者につながり、片付けだけでなく、見守りや介護予防のサービスにつながることもあります。一人で抱え込まず、早めに窓口を持っておくことが、長い目で見て負担を減らします。
行政のゴミ屋敷対応はどこまでやってくれるか
相談したからといって、行政がすぐに片付けてくれるわけではありません。環境省の調査では、対応内容は**現地確認88.7%、原因者への直接指導・助言79.2%**が中心で、行政が代わりに片付ける「行政代執行」のようなケースはまれです。
改善につながった理由として挙げられているのは、原因者への助言・指導、原因者の転居や死亡等、関係部署・関係機関の連携による包括的支援、地域の方や親族による清掃、収集運搬許可業者の紹介などです。生活が苦しい場合は、「生活環境改善事業」という枠組みで業者に清掃を依頼し、撤去費用を保護費で支給する支援例も報告されています。行政は「本人の同意を前提にした後押し役」と考えておくのが実情に近く、この点は次のセクションで詳しく見ます。
大量の物を出す段階になったら、自治体の粗大ごみも選択肢の一つです。福井市の場合、戸別収集は1点あたり小605円・中770円・大935円で、電話0776-35-0052の事前予約制、1回5点まで、収集は平日のみ、福井市在住者に限られます。少量ずつ出せる状態なら自治体、量が多ければ許可を持つ業者にまとめて依頼する、という使い分けになります。片付けの実際の手順はゴミ屋敷を一人で片付ける手順を参考にしてください。
片付けは「支援とセット」で(片付けても戻る)
一度きれいに片付けても、本人を取り巻く事情(体力、孤立、判断力)が変わらないままだと、時間が経って元の状態に戻ってしまうことがあります。環境省の調査でも、改善につながった対応の多くは、片付けそのものより関係機関の連携や親族・地域による継続的な関わりでした。
片付けを「一回きりのイベント」ではなく、見守りや福祉の支援とセットにするという考え方を持つと、リバウンドを防ぎやすくなります。具体的には、地域包括支援センターに継続的な見守りを相談する、ケアマネジャーが決まっている場合は状況を共有する、といった形です。片付けの範囲や進め方で業者を検討する段階になったら、遺品整理業者の選び方も参考にしてください。
遠方に住んでいる場合の進め方
離れて暮らしていると、実家の状態をこまめに確認できないのが悩みどころです。次のような形で、少しずつ把握を進めます。
- 帰省のたびに、状態を写真で記録しておく。前回との違いが分かりやすくなります
- 安全に関わる部分(避難経路、火の元、床や壁の傷み)を優先してチェックする
- 地域包括支援センターや近隣に住む親族など、実家に近いキーパーソンを一人決めておく
- 通帳・保険証券・権利証などの重要書類が、どこにあるかを少しずつ把握しておく
国民生活センターは、遺族が故人のサブスクリプションや有料会員の解約に、ID・パスワード・スマートフォンのロック解除方法が分からず困る相談が寄せられていると注意しています。片付けと合わせて、実家に通う機会に契約や書類の把握も進めておくと、あとで慌てずに済みます。頻繁に通えない事情や進め方の順番で迷うときは、相談フォームから状況をお送りいただければ、動き方の整理をお手伝いします。
安全上すぐ動くべきサイン
説得や相談をゆっくり進める余裕がない場合もあります。環境省の調査では、条例の適用対象になるかを判断する際に重視されている点として、**周辺住民等への影響92.2%、悪臭・害虫等の有無74.4%、物の量66.7%**が挙げられています。これは行政の基準であると同時に、家族が緊急度を見極める目安にもなります。
- 玄関や窓など、避難できる出入口がふさがっている
- 積み上がった物が、暖房器具やコンロの近くにある
- 強い悪臭や害虫が発生し、近隣に影響が出ている
このいずれかに当てはまるなら、説得のプロセスを飛ばしてでも、安全に関わる部分だけ先に動きます。状態の見極め方はゴミ屋敷のレベルとはにまとめています。
福井で相談するなら
冒頭で触れたとおり、環境省の調査では福井県内の認知件数は7件、改善件数は0件でした。件数が少ないのは、実際に困っている家庭が少ないからとは限らず、相談先にたどり着けていないだけの可能性もあります。福井で実家の状況に気づいたときの相談先を、内容別に整理します。
| 相談内容 | 窓口 | 連絡先 |
|---|---|---|
| ごみの出し方・不用品回収業者について | 福井市 環境廃棄物対策課 | 電話0776-20-5398(平日8時30分〜17時15分) |
| 親の暮らし全般・介護・福祉 | 実家がある市町村の地域包括支援センター | 市町村の代表電話から案内を依頼 |
| 粗大ごみの予約 | 福井市 収集資源センター | 電話0776-35-0052 |
家庭の不用品を回収できるのは、一般廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者だけです。無許可のチラシやトラックで集める業者に渡すと、不法投棄されるおそれがあります。実家じまい全体を見据えた進め方は実家じまいの進め方、遠方から進めるときの考え方は遺品整理 実家遠方も参考にしてください。
どこから手をつけていいか分からない、本人の様子や連絡先の窓口で迷う、というときは、状況と写真を相談フォームからお送りください。お名前・電話番号は不要です(返信用にメールアドレスだけいただきます)。
よくある質問
実家がゴミ屋敷になっていたら、まず何をすればいいですか?
いきなり片付けたり捨てる約束を取り付けたりせず、まず安全(避難経路がふさがっていないか、火の元に物がないか)を確認します。そのうえで本人を責めずに困りごとを聞き、実家がある市町村の地域包括支援センターに相談するのが最初の一歩です。地域包括支援センターは市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、片付け専門の機関ではありませんが、福祉や介護の支援につないでもらえます。
親を説得しても片付けを嫌がります。どうすればいいですか?
「汚い」「捨てて」と迫ると、本人は防衛的になりやすく、次に動けなくなります。片付けられない背景は、体力の低下、喪失体験、孤立などさまざまで、断定はできません。捨てる約束を取り付けるより、暮らしの困りごと(足元が危ない、探し物が見つからない)から話を始め、地域包括支援センターなど第三者を間に入れる方が進みやすくなります。
行政はゴミ屋敷を強制的に片付けてくれますか?
自治体によって対応は大きく異なります。環境省の令和6年度調査では、対応の中心は現地確認や本人への助言・指導で、強制的な片付け(行政代執行)はまれです。改善につながった例の多くは、関係機関の連携や親族・地域の清掃、許可業者の紹介など、本人の同意を前提にした支援でした。福井県内は、直近5年度の認知件数が7件、改善件数は0件です。
遠方に住んでいて実家に頻繁に行けません。どう進めればいいですか?
帰省のたびに、状態を写真で記録し、安全に関わる部分(避難経路、火の元、傷みが進んでいる箇所)を優先して確認します。地域包括支援センターや近隣に住む親族など、実家に近い相談先・キーパーソンを一人決めておくと、緊急時の連絡がスムーズです。通帳や保険証券など重要書類の在りかも、帰省時に少しずつ把握しておきます。
福井で実家のゴミ屋敷を相談できる窓口はどこですか?
ごみの出し方や不用品回収業者についての相談は、福井市 環境廃棄物対策課(電話0776-20-5398、平日8時30分〜17時15分)。高齢の親の暮らし全般や介護・福祉に関わる相談は、実家がある市町村の地域包括支援センターです。市町村の代表電話に「地域包括支援センターにつないでほしい」と伝えれば案内してもらえます。


