親が施設に入った、あるいは亡くなって、誰も住まなくなった実家。片付けて、売るのか貸すのか壊すのかを決め、次に活かせる状態にするまでの一連の作業を「実家じまい」と呼びます。
先延ばしにすると、空き家の維持費が年におよそ26万円かかり続け、建物は傷み、相続人が代替わりして話がまとまらなくなります。相続後は、相続登記が取得を知った日から3年以内に義務づけられており、放置すると10万円以下の過料の対象です。
ここでは、実家じまいを始めるタイミング、親族での話し合いから相続登記・家財整理・売却までの6ステップ、よくある失敗の防ぎ方、遠方やきょうだいがいる場合の進め方を、福井の事情もふまえて解説します。
実家じまいはいつから始めるか
始める時期は、親の状況で変わります。
- 親が元気なうち。生前整理と兼ねて、使わない家財を少しずつ減らし、家族で「この家をどうするか」を話しておきます。判断に必要な書類(権利証、固定資産税の通知、建築時の図面)の場所も確認しておきます。この段階で動けると、相続後の負担が大きく減ります。
- 親が施設に入所したとき。誰も住まなくなった時点から維持費が発生します。すぐに売却しない場合も、家財の整理と、賃貸に出すか売るかの検討を始めます。
- 相続が発生したとき。相続登記の3年ルール、相続税の申告期限(10か月)、空き家の譲渡特例の期限(相続開始から3年を経過する年の12月31日まで)が同時に走り出します。放置する時間はありません。
急ぐ事情がなくても、空き家は置いておくだけで負担が増えていきます。
置いておくほど、負担が増える
「まだ元気だから」「気持ちの整理がつかないから」と先延ばしにすると、次の負担が積み上がります。
- 維持費がかかり続ける。固定資産税、火災保険、水道光熱の基本料、月に一度の見回り。合わせて年におよそ26万円が、住んでいなくても出ていきます。
- 建物が傷んで価値が下がる。人が住まない家は換気されず湿気がこもり、傷みが早く進みます。福井のように雪の多い地域では、冬のあいだに雪の重みや凍結で雨どい・外壁に被害が出ることもあります。築20年を過ぎると、建物としての資産価値は大きく落ちます。
- 固定資産税が上がることがある。手入れされず放置された家が「管理不全空家」や「特定空家」に該当し、市区町村長から勧告を受けて改善されないと、土地の住宅用地特例(小規模住宅用地は課税標準を6分の1)が外れ、税額が跳ね上がります。空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく措置です。
- 相続人が増えて話がまとまらない。相続登記をしないうちにきょうだいが亡くなると、その配偶者や子に権利が分かれ、売却や解体に全員の同意が必要になります。
福井県の空き家率は15.6%で、全国でも高い水準です。空き家を抱えたまま次の世代に渡すと、より複雑な状態で引き継ぐことになります。
進め方の6ステップ
相続後の実家じまいは、次の順番で進めます。
- 親族で方針を話し合う。売る・貸す・壊して更地で売る・自分や家族が使う。誰が中心になって進め、費用と売却代金をどう分けるかも決めます。
- 相続登記をする。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内が義務です(令和6年4月から)。遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで、いったん義務を果たせます。
- 家財・遺品を整理する。通帳・印鑑・権利証・保険証券・現金・鍵などの重要なものを先に探します。片付けの手順は遺品整理を自分でやる手順にまとめています。
- 活用方法を決める。立地や建物の状態、費用と手取りの見込みで、売却・賃貸・解体・自己利用のどれにするかを判断します。
- 不動産会社に査定を依頼する。複数社に依頼し、地元の相場に詳しい会社を選びます。この段階で、空き家の3000万円特別控除が使えるかも確認します。
- 契約から引き渡しまで。売買契約、決済、鍵の引き渡し。売却した翌年に譲渡所得の確定申告をします。
登記や税は司法書士・税理士に、家財は許可のある業者に、と役割を分けると進みます。相続の手続きと期限は遺品整理と相続放棄、費用の内訳は実家じまいの費用のページ、税の特例は実家じまいと相続のページで詳しく説明しています。
このうち、時間と体力がかかるのが家財の片付けです。
家財の片付けをどう進めるか
家財整理には、3つの選び方があります。
- 自分・親族でやる。費用は処分費だけで済みますが、量が多いと数週間かかります。福井市の粗大ごみは小605円・中770円・大935円で、電話(0776-35-0052)かオンラインで事前予約します。1回5点までです。
- 遺品整理・不用品回収の業者に頼む。量が多い、遠方で通えない、期限がある場合に向きます。一般廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者か、許可業者へ委託している業者を選びます。
- 自分で減らしてから業者に頼む。搬出できる範囲で分別して出し、残りを業者に任せると費用を抑えられます。
「無料回収」「格安」をうたい、チラシやトラックで集める無許可業者は、渡した家財が不法投棄されるリスクがあります。詳しくは不用品回収のチラシに注意にまとめています。福井の業者と費用のめやすは福井の遺品整理の料金相場と福井の遺品整理業者に、福井市内の依頼は福井市の遺品整理にあります。
解体して更地にする場合、福井市には老朽危険空き家等の除却を補助する制度があります(令和8年度)。除却費用の2分の1、または延べ床面積×5,000円のいずれか安いほうで、上限50万円です。跡地を地域で利用する場合は上限100万円になります。窓口は福井市建設部住宅政策課(電話0776-20-5571)です。
片付けと並行して、進め方でつまずきやすい点も押さえておきます。
よくある失敗と、防ぎ方
実家じまいで多いのは、次の5つです。
- 親族に相談せず進める。片付けや売却を一人で決めると、「勝手に処分した」「安く売った」ともめます。方針は最初に全員で共有し、遺産分割協議書に残します。
- 急いで全部捨てる。写真、手紙、位牌、仏壇まで一気に処分すると、あとで後悔しやすくなります。迷ったものは残し、供養が必要なものは分けておきます。
- 相続登記を後回しにする。3年以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料です。売却や解体にも登記が必要です。
- 相場を調べずに売る。最初に声をかけた一社の査定額で決めず、複数社に依頼して比べます。
- 一人で抱え込む。きょうだいがいるのに一人で作業し、費用も立て替える状態が続くと、関係が悪くなります。役割と費用の分担を早めに決めます。
進め方で迷ったり、親族の意見が割れて動けないときは、チャットでの相談から状況をお送りください。匿名で構いませんし、営業の電話がかかることはありません。
最後に、遠方やきょうだいがいる場合の進め方を整理します。
遠方の実家、きょうだいがいる場合
実家が遠方にある場合、通う回数を減らす工夫が必要です。家財の仕分けは、盆や正月など親族が集まるタイミングにまとめて行い、残す品・処分する品・形見分けの品を決めておきます。実際の搬出や査定は、写真・動画で対応してくれる地元の業者・不動産会社に任せます。管理が負担になってきたら、まず現状を整理するところから地域の不動産会社に相談します。
きょうだいがいる場合、誰が何を相続し、費用と売却代金をどう分けるかを、口約束でなく遺産分割協議書に残します。きょうだいの一人が亡くなると、その配偶者や子に権利が移り、話し合いに加わる人が増えます。時間がたつほど当事者が増えるため、早く決めるほど手続きは簡単です。
一人っ子の場合、相談できる相手がいないぶん、司法書士や不動産会社など第三者に早めに入ってもらうと、判断がぶれずに進みます。片付けや売却の段取りを一人で組むのが不安なときは、チャットでの相談から状況をお送りください。順番と、どこに何を頼めばよいかをお伝えします。
実家じまいの相談先・処分先の早見表
| 内容 | 連絡先・確認先 |
|---|---|
| 相続登記の相談 | 法務局、司法書士会 |
| 空き家の税の特例・確定申告 | 税務署、税理士 |
| 福井市の粗大ごみ予約 | 収集資源センター 電話0776-35-0052 |
| 福井市の空き家の除却補助 | 福井市建設部住宅政策課 電話0776-20-5571 |
| 家財がまとまって出る片付け | 一般廃棄物収集運搬業の許可がある業者 |
| 親族の意見が割れて動けない | 司法書士・弁護士、当サイトのチャット相談 |
よくある質問
実家じまいはいつから始めればいいですか?
親が元気なうちに、生前整理と兼ねて家財を減らし、家族で方針を話し合っておくのが一番負担が少なくて済みます。親が施設に入ったとき、または相続が発生したときが実際の着手時期になります。相続後は、相続登記が取得を知った日から3年以内に義務づけられているため、早めに動く必要があります。
実家じまいで最初にやることは?
親族全員で方針(売る・貸す・壊す・使う)を共有することです。誰が中心になって進め、費用をどう分担するかも決めます。独断で進めると、あとで「勝手に売った」ともめる原因になります。
実家じまいでやってはいけないことは?
親族に相談せず進める、思い出の品まで急いで全部捨てる、相続登記を後回しにする、相場を調べずに最初の一社に売る、一人で抱え込む、の5つです。特に相続登記の放置は、令和6年4月から10万円以下の過料の対象です。
遠方の実家はどう進めればいいですか?
帰省のタイミングに作業日を合わせ、家財の仕分けはその機会にまとめて行います。搬出や査定は、写真や動画で対応してくれる地元の業者・不動産会社に任せる方法があります。管理が負担なら、まず現状を整理するところから地域の不動産会社に相談します。
きょうだいがいる場合の注意点は?
誰が何を相続するか、費用をどう分けるか、売却代金をどう分けるかを、口約束でなく書面(遺産分割協議書)に残します。きょうだいの一人が亡くなると、その子や配偶者に権利が移り、話し合いに加わる人が増えて手続きが複雑になります。