実家を相続すると、いくつもの期限が同時に走り出します。相続登記は3年以内、相続税の申告は10か月以内、空き家を売って特例を使うなら相続開始から3年以内。どれも「あとで」では済みません。
さらに、手入れをせずに放置すると、固定資産税が上がることもあります。一方で、条件を満たせば売却益から3,000万円を差し引ける特例もあります。
ここでは、実家じまいに関わる相続登記・相続税・空き家の譲渡特例・固定資産税、そして相続放棄を考えるときの注意点を、福井の制度もふまえて整理します。税の詳細は個別の事情で変わるため、最終的な判断は税理士・司法書士に確認してください。
相続登記は3年以内が義務
令和6年(2024年)4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、法務局へ登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
施行日より前に発生した相続も対象です。この場合は、令和9年(2027年)3月31日までに登記します。
遺産分割の話し合いがまとまらず、3年以内に登記できそうにないときは、相続人申告登記という簡易な手続きがあります。自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、いったん義務を果たしたことになります。ただしこれは権利関係を確定するものではないため、実家を売却・解体するときは、あらためて正式な相続登記が必要です。
登記が済んだら、相続税の確認に移ります。
実家にかかる相続税
相続税は、亡くなった方の財産の合計が基礎控除額を超えた場合にかかります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば相続人が子2人なら4,200万円までは相続税がかかりません。
実家(土地)については、小規模宅地等の特例があります。亡くなった方が住んでいた土地を、配偶者や同居の親族などが相続すると、330平方メートルまで評価額を80%減額できます。この特例が使えると、評価額が大きく下がり、基礎控除の範囲に収まって相続税がかからなくなることもあります。
ただし、別居していて持ち家がある子が相続する場合は、原則としてこの特例は使えません。持ち家がなく賃貸に住んでいる子(いわゆる「家なき子」)が相続する場合など、一定の条件を満たせば使えることがあります。適用できるかは家族構成と居住状況で細かく変わるため、相続税の申告が必要そうなら早めに税理士に確認します。
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。加えて、故人に事業所得や不動産所得、一定額以上の年金収入があった場合は、準確定申告(相続を知った日の翌日から4か月以内)も必要です。実家を賃貸に出していた親が亡くなったケースなどが該当します。
実家を売る予定なら、次の特例も確認します。
空き家を売るなら「3000万円特別控除」
一定の要件を満たすと、相続した空き家を売った譲渡所得(売却益)から、最高3,000万円を控除できます。令和6年1月1日以後の売却で、その家と土地を相続した相続人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円です。
主な要件は次のとおりです。
- 亡くなった親が、その家に一人で住んでいたこと
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家(旧耐震基準)であること
- マンションなどの区分所有建物でないこと
- 相続してから売るまで、ずっと空き家(賃貸にも自分の居住にも使っていない)であること
- 売却代金が1億円以下であること
- 耐震リフォームして売る、または家を取り壊して更地で売ること
売却期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。さらに、特例そのものの適用期限が令和9年(2027年)12月31日と決まっています。要件が細かく、期限も二重にあるため、実家を売ると決めたら早めに税理士へ相談します。自分の実家が要件に当てはまりそうか、まず整理したいときは、建築年や間取り、親の居住状況をチャットでの相談からお送りください。
売らずに置いておく場合は、固定資産税に注意します。
放置すると固定資産税が上がる
「空き家を持っていると固定資産税が6倍になる」と言われますが、放置しただけで自動的に上がるわけではありません。
通常、住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」で、固定資産税の課税標準が6分の1(小規模住宅用地)に軽減されています。
手入れされず放置された家が「管理不全空家」や「特定空家」に該当し、市区町村長から改善の勧告を受け、それでも改善しなかった場合に、この特例が外れます。特例が外れると、土地の固定資産税が実質的に大きく上がります。空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく措置で、令和5年12月の改正で「管理不全空家」が新たに加わりました。
対策は、庭の草木を刈る、雨戸を閉める、定期的に換気するなど、最低限の管理を続けることです。遠方で通えない場合は、空き家管理サービス(月数千円で見回り・通風・郵便物確認)を使う方法もあります。管理が難しければ、解体して更地にする、売却する、といった判断を早めにします。ただし、建物を取り壊すとその時点で住宅用地の特例が外れるため、解体は売却や活用のめどが立ってから行います。福井市には老朽危険空き家等の除却補助(上限50万〜100万円、窓口は住宅政策課 電話0776-20-5571)があります。費用の目安は実家じまいの費用にまとめています。
財産より負担が大きい場合は、相続放棄も検討します。
相続放棄を考えるとき
次のような場合は、相続放棄が選択肢になります。
- 故人に借金があり、プラスの財産より多い
- 実家しか相続財産がなく、老朽化していて売れる見込みが薄い
- 実家が遠方で、管理も解体費用の負担も難しい
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。注意点は、故人の財産を処分・売却すると、相続を承認したとみなされ、放棄できなくなることです。実家の片付け、家財の売却、預金の引き出しをする前に、弁護士・司法書士へ相談してください。線引きは遺品整理と相続放棄で詳しく説明しています。
相続放棄をしても、次に管理する人が決まるまでは家財を適切に保管する義務が残ることがあり、実家がすぐに「手放せる」わけではありません。放棄すべきか、片付けて売るべきか迷うときは、チャットでの相談から状況をお送りください。匿名で構いませんし、営業の電話がかかることはありません。実家じまいの進め方は実家じまいの進め方、費用は実家じまいの費用にまとめています。
相続後の期限と相談先の早見表
| 手続き | 期限 | 相談先 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 相続を知った日から3か月以内 | 弁護士・司法書士、家庭裁判所 |
| 準確定申告(故人に収入があった場合) | 相続を知った日の翌日から4か月以内 | 税務署・税理士 |
| 相続税の申告・納税 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内 | 税務署・税理士 |
| 相続登記 | 取得を知った日から3年以内 | 法務局・司法書士 |
| 空き家3000万円控除の売却 | 相続開始日から3年を経過する年の12月31日 | 税理士 |
| 福井市の空き家除却補助 | 予算枠あり・着工前に申請 | 福井市住宅政策課 0776-20-5571 |
よくある質問
実家を相続したら、いつまでに何をすればいいですか?
相続登記は取得を知った日から3年以内(令和6年4月から義務)、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。空き家を売って3000万円控除を使うなら、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却します。
相続登記をしないとどうなりますか?
正当な理由なく3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。また、登記をしないと実家の売却や解体ができません。遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで、いったん義務を果たせます。
空き家の3000万円控除はどんなときに使えますか?
亡くなった親がその家に一人で住んでいたこと、昭和56年5月31日以前の建築、区分所有建物でないこと、相続時から売却時まで空き家だったこと、売却代金が1億円以下、耐震リフォームまたは取壊しをすること、が主な要件です。売却期限もあるため、早めに税理士へ確認します。
空き家を放置すると固定資産税が6倍になるって本当ですか?
放置しただけで自動的に上がるわけではありません。手入れされず「管理不全空家」「特定空家」に該当し、市区町村長から勧告を受けて改善しなかった場合に、土地の住宅用地特例(課税標準6分の1)が外れて税額が上がります。
実家しか相続財産がなく、老朽化して遠方です。相続放棄できますか?
借金や維持費の負担がプラスの財産を上回るなら、相続放棄が選択肢です。ただし放棄は相続を知った日から3か月以内で、故人の財産を処分・売却すると放棄できなくなります。片付けや売却をする前に弁護士・司法書士へ相談してください。