遺品整理で遺言書が見つかったら|開けてもいい?まずやること

公開:2026.09.16更新:2026.09.16杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
遺品整理で遺言書が見つかったら|開けてもいい?まずやることのイメージ

遺品整理の途中で、手紙の束や金庫、引き出しの奥から「遺言書」と書かれた封筒や、それらしき書類が出てくることがあります。ここでその場で開けてしまうと、あとの手続きに影響することがあります。

結論から言うと、遺言書らしきものを見つけたら、封を切らずにそのまま保管し、「法務局に預けられているものか」「自宅で保管されていたものか」をまず確認するのが最初の一歩です。扱い方はこの2つで分かれます。

遺言書を見つけたときに最初にやること・やってはいけないことを、法務省の制度にもとづいてまとめます。通帳や現金が一緒に出てきた場合の扱いは遺品整理で現金が出てきたら、相続放棄を考えている場合に片付けで注意すべきことは遺品整理と相続放棄で詳しく解説しています。

遺言書が出てきたら、まずやってはいけないこと(勝手に開封しない)

封筒に「遺言書」「遺言」と書かれていたり、それらしい文書が見つかったりしたとき、まずやってはいけないのはその場で開けて中身を確認することです。

理由は単純で、開け方や保管のされ方によって、その後の手続きが変わるからです。法務局に預けられている遺言書か、自宅で保管されていた遺言書かで、開封の可否や次にやることが違います。どちらか分からないうちは、封筒ごと安全な場所に保管し、無理に開けずに次の見分け方に進んでください。

見つけた時点でやるべきなのは、日時・見つけた場所を記録し、写真を撮り、相続人となる家族に共有することです。ここは、現金や通帳が見つかったときの基本姿勢と同じです。

一人だけで見つけて、一人だけの判断で開けてしまうと、あとで「本当に開封前と中身が同じか」を他の相続人に証明しづらくなります。できれば見つけた時点で家族に連絡し、複数人が立ち会える状態にしてから次の確認に進むと、あとのトラブルを避けやすくなります。

法務局に預けられた遺言書か、自宅保管の遺言書かで対応が変わる

遺言書が見つかったときの判断フロー

遺言書らしきものを見つけたら、封筒に法務局の記載や預り証があるかを確認します。開封せず、見た目だけで確認できる範囲です。

  • 法務局保管の記載や預り証がある場合 その遺言書は「自筆証書遺言書保管制度」を使って法務局(遺言書保管所)に預けられているとみられます。開封して構いません。保管所に問い合わせれば、内容を確認・請求できます
  • 記載がなく、自宅の金庫や引き出しに直接しまわれていた場合 自宅保管の遺言書とみられます。開封せず、家庭裁判所へ相談してください

判断がつかないときも、無理に開けずに次の項で説明する保管制度の照会から確認するのが安全です。封筒の見た目だけで判断が難しい場合、「法務局」「遺言書保管所」という言葉がどこかに書かれていないか、一緒に保管されている書類に手数料の受領書のようなものがないかも手がかりになります。

自筆証書遺言書保管制度とは(預けられているか調べる方法・手数料)

自筆証書遺言書保管制度とは、本人が作成した自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度です。令和2年(2020年)7月10日から始まりました。

故人がこの制度を使っていれば、相続人は法務局(遺言書保管所)に照会し、遺言書の有無や内容を確認できます。手数料は次のとおりです。

手続き手数料
保管の申請一件につき3,900円
遺言書の閲覧(モニター)一回1,400円
遺言書の閲覧(原本)一回1,700円
遺言書情報証明書の交付一通1,400円
保管申請の撤回・変更の届出無料

封筒や関連書類に保管制度を使ったことを示すメモ・預り証が見当たらない場合でも、念のため法務局に照会してみる価値はあります。確認できれば、次の検認の手続きが不要になります。

自宅で見つけた遺言書は、家庭裁判所の検認が必要とされる(詳しくは家庭裁判所へ)

法務局に預けられていない、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、開封前に家庭裁判所の検認という手続きが必要とされる場合があります。検認は、遺言書の状態を家庭裁判所が確認し、あとで内容を書き換えたなどの疑いが生じないようにするための手続きとされています。

申立ての要否・必要書類・費用・期間といった具体的な手続きは、家庭ごとの事情によって変わるため、この記事では断定しません。遺言書らしきものを自宅で見つけたら、開封せずに、最寄りの家庭裁判所か、弁護士・司法書士に相談するのが確実です。公正証書遺言(公証役場で作成された遺言書)の場合は、検認は不要とされ、公証役場への照会で確認できる場合があります。これも詳細は公証役場や専門家に確認してください。

自筆の遺言書か公正証書遺言かの見分けがつかない場合も、無理に自分だけで判断しようとせず、専門家にそのまま状況を伝えるほうが早く進みます。「封筒に何と書かれていたか」「どこに保管されていたか」「一緒に何が入っていたか」をメモしておくと、相談したときに状況を伝えやすくなります。

遺産分割が終わるまで、勝手に財産を処分してはいけない

遺産分割前にやっていいこと・いけないこと

遺言書の内容が分かる・分からないにかかわらず、共通して守るべき原則があります。相続財産は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有というルールです(民法898条)。預貯金も遺産分割の対象で、相続人が単独で全額を引き出すことは原則としてできません。

この原則があるため、遺言書が見つかった段階で次のことはしないでください。

  • 故人名義の不動産・家財を売却・処分する
  • 故人の預金口座から単独でお金を引き出す
  • 「遺言の内容が気に入らないから」と、財産を勝手に動かす

不動産や家財を売却・処分すると、それだけで「法定単純承認」をしたとみなされることがあります(民法921条)。あとから相続放棄をしたいと思っても、できなくなるおそれがあるということです。相続放棄を考える可能性が少しでもあるなら、なおさら財産には手をつけないでください。片付けの中で何をすると相続放棄できなくなるかは、遺品整理と相続放棄に具体例をまとめています。

遺言書の内容に納得できないとき

遺言書の内容を確認して、「これは想定と違う」「納得できない」と感じることもあります。その場合でも、その場で財産を動かさないことが最初の対応です。

内容を記録し、相続人全員で共有したうえで、次にどうするかを考えます。納得できない事情が具体的にある場合(遺言書の形式に不備がある、判断能力に疑問がある、など)は、弁護士や司法書士といった専門家への相談が必要になります。感情的な納得のいかなさだけで財産を処分してしまうと、前述のとおり法定単純承認とみなされ、選択肢を狭めることになりかねません。

遺言書の有効性に疑問があっても、それを判断するのは相続人自身ではなく、最終的には裁判所です。家族間で話し合いがまとまらない場合は、早い段階で専門家を交えたほうが、感情的な対立を長引かせずに済みます。相続人同士の関係を保ちたい場合ほど、財産を動かさずに記録と共有を先に済ませておくことが大切です。

福井で相談するなら

遺言書に不動産の記載があれば、その後の相続登記の進め方にも影響します。令和6年(2024年)4月1日から相続登記の申請が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。遺産分割が難しい場合は、相続人申告登記という簡易な手続きもあります。実家の相続登記・相続税の期限やスケジュールは実家じまいと相続税・登記にまとめています。

遺言書の検認手続きは家庭裁判所、内容の確認や専門家への相談窓口は弁護士・司法書士が中心になります。「まず何から手をつければいいか分からない」という段階でも構いません。見つけた書類の状態(封筒の記載、預り証の有無)を相談フォームからお送りいただければ、次に確認すべき窓口の整理をお手伝いします。

遺品整理そのものの進め方は遺品整理の流れ、通帳や現金が一緒に見つかった場合の扱いは遺品整理で現金が出てきたらを参考にしてください。

よくある質問

遺品整理で遺言書らしきものを見つけたら、開けてもいいですか?

その場では開けないでください。封筒に法務局(遺言書保管所)の記載や預り証があれば、法務局のこの制度に預けられている遺言書とみて照会します。記載がなく自宅で保管されていたとみられる場合は、開封せずに家庭裁判所へ相談してください。自宅保管の遺言書は、開封前に家庭裁判所の検認が必要とされる場合があります。

自筆証書遺言書保管制度とは何ですか?

本人が作成した自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)に預けられる制度です。令和2年7月10日から始まりました。保管の申請手数料は一件3,900円、遺言書の閲覧はモニターで1回1,400円・原本で1,700円、遺言書情報証明書の交付は1通1,400円です。この制度を使っていれば、相続人は法務局に確認・請求ができます。

遺言書の検認とは何ですか?必ず必要ですか?

自宅など法務局以外で保管されていた自筆証書遺言は、開封前に家庭裁判所の検認という手続きが必要とされる場合があります。申立ての要否・費用・期間といった具体的な手続きは、事案によって異なるため、家庭裁判所や弁護士・司法書士に確認するのが確実です。法務局に保管されていた遺言書は、この検認が不要とされています。

遺言書が見つかった場合、遺産分割前に財産を処分してもいいですか?

いけません。相続財産は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有です(民法898条)。遺言書の内容にかかわらず、不動産や家財の売却・処分、預金の単独引き出しは避けてください。売却・処分をすると、それだけで法定単純承認(民法921条)とみなされ、あとから相続放棄をしたくてもできなくなるおそれがあります。

遺言書の内容に納得できないときはどうすればいいですか?

その場で財産を動かさず、まず内容を記録し、相続人全員で共有してください。遺言書に不満があっても、勝手に処分すると法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。納得できない事情が具体的にあるなら、弁護士や司法書士など専門家に相談することをおすすめします。

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