
「生前整理と遺品整理、何が違うの?」「うちはどちらをすればいいのか」——似た言葉のため、混同されがちです。
結論から言うと、生前整理は本人が元気なうちに行い、遺品整理は亡くなったあとに遺族が行うという点が最大の違いです。この記事では、生前整理=本人、遺品整理=遺族という主語の違いを軸に、それぞれのメリット・デメリット、判断力が落ちる前にやっておくべき理由、家族に渡すときの税金の注意、そしてどちらを選ぶべきかを、親の状況別に整理します。
生前整理と遺品整理の違い(だれが・いつ・何を決められるか)
生前整理と遺品整理は、どちらも「物や財産を整理する」という行為は共通していますが、主語がまったく違います。
| 生前整理 | 遺品整理 | |
|---|---|---|
| だれが | 本人 | 遺族 |
| いつ | 元気なうち | 亡くなったあと |
| 何を残すか決める人 | 本人 | 遺族(推測) |
| かけられる時間 | 時間をかけられる | 期限に追われやすい |
| デジタルの扱い | 本人がIDやパスワードを整理できる | 遺族が分からず苦労することがある |
デジタルの扱いについて、国民生活センターは、遺族が故人のサブスクや有料会員を解約したくても、IDやパスワード、スマートフォンのロック解除方法が分からず手続きできない相談が寄せられていると注意を呼びかけています。生前整理なら、この情報を本人が生きているうちに整理しておけます。
生前整理をいつから・何から始めるかは生前整理はいつから始める?、遺品整理を始める時期は遺品整理はいつから始める?に手順をまとめています。ここでは、両者のどちらを選ぶべきかという判断に絞って見ていきます。
生前整理のメリットとデメリット
生前整理は本人が主体になれる分、メリットが多い一方、実行できる期間には限りがあります。
メリット
- 何を残し、何を手放すかを本人が自分で決められる
- 家族に渡す財産や思い出の品を、気持ちのうちに直接伝えられる
- デジタルの契約やパスワードを整理でき、遺された家族が困らない
- 結果として、遺族の作業量・費用・心理的な負担が小さくなる
デメリット
- 物の仕分けや運搬には体力が要り、判断にも気力が要る
- まとまった時間がかかるため、後回しにしやすい
- 判断力が落ちてから始めようとしても、本人だけでは進められなくなる
体力と判断力が要る作業である以上、いつまでも先延ばしにはできません。次の章で、判断力が落ちたあとに何が起きるかを見ていきます。
遺品整理のメリットとデメリット
遺品整理は遺族が担う分、生前整理とは逆の性質を持ちます。
メリット
- 本人に代わって、遺族の判断ですぐに片付けを進められる
- 相続や退去などの手続きと並行して進められる
- 業者に依頼すれば、体力的な負担を減らせる
デメリット
- 「何を残したかったか」が分からず、判断に迷う場面が多い
- 賃貸の退去期限、相続放棄の期限など、期限に追われながら進めることが多い
- 業者との契約や作業をめぐるトラブルが起きることがある。遺品整理サービスに関する相談は、全国の消費生活センター等に毎年70〜114件(2013〜2017年度・PIO-NET登録分)寄せられている
業者とのトラブルを避ける手順は遺品整理業者の選び方、実際に起きたトラブルの類型と対処は別記事にまとめています。遺品整理は遺族にとって負担が大きい作業になりやすいからこそ、生前整理で減らせる部分があるなら減らしておく価値があります。
判断力が落ちてからでは、本人はできない(成年後見の話)
生前整理を「まだ元気だから」と先延ばしにする方は多いですが、健康寿命(介護等を必要とせず日常生活を送れる期間)は、厚生労働省の集計で男性72.57年・女性75.45年(令和4年・2022年)です。平均寿命との差は男性8.49年・女性11.63年で、この期間は日常生活に何らかの制限が出やすくなります。
さらに注意したいのは、認知症などで判断能力が低下すると、本人が単独で財産の処分や贈与を進めることが難しくなることがある点です。厚生労働省は成年後見制度を次の2つに整理しています。
- 任意後見制度 判断能力があるうちに、本人が自ら選んだ人に「代わりにしてもらいたいこと」を契約で決めておく制度
- 法定後見制度 すでに判断能力の低下が生じている場合に、家庭裁判所が後見人等を選任する制度。判断能力の程度により「補助」「保佐」「後見」の3類型がある
つまり、判断力が落ちてから生前整理をしようとしても、本人の意思だけでは財産の処分や贈与を進められなくなり、家庭裁判所を通じた手続きが必要になる場合があります。判断能力の状態や、任意後見・法定後見のどちらが適するかは個別事情によって異なるため、司法書士・弁護士・家庭裁判所などの専門家に相談することをおすすめします。
生前整理で家族に渡すもの・贈るときの税金の注意
生前整理では、財産や物を家族に渡す場面も出てきます。渡し方によっては税金がかかることがあるため、事前に知っておくと安心です。
- 現金や預貯金を贈与するとき 国税庁によると、1人が1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った財産の合計額から、暦年課税の基礎控除額110万円を差し引いた残りに贈与税がかかります。合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です
- 不用品を売却するとき 家具・衣服など生活に通常必要な動産の譲渡による所得は、原則として非課税です。ただし、貴金属・宝石・書画・骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは譲渡所得の課税対象になります
高価な着物や骨とう、貴金属を家族に渡す・売却する場合は、この30万円の基準を意識しておくとよいでしょう。買取や税金の扱いは遺品の買取|売れるものと3つの売り方でも詳しく解説しています。個別の税額の判断は、税務署または税理士に確認してください。
どちらを選ぶか(親が元気/要介護/すでに他界の3ケース)
ここまでの内容を踏まえ、状況別にどちらを選ぶべきかを整理します。
ケース1|親が元気 生前整理を本人と一緒に進めます。本人が残すものを決められ、時間もかけられる、いちばん負担の少ないタイミングです。始め方は生前整理はいつから始める?を参考にしてください。
ケース2|要介護・判断力の低下がみられる できる範囲で生前整理を進めつつ、財産管理や契約の面で本人だけでは難しいことが増えてきたら、成年後見の利用を検討します。任意後見・法定後見のどちらが必要かは状況によるため、司法書士や弁護士、家庭裁判所に相談してください。
ケース3|すでに他界している このケースでは生前整理はできず、遺族による遺品整理を進めることになります。賃貸の退去期限や相続放棄の期限など、期限のある手続きと並行して進める必要があるため、遺品整理はいつから始める?や遺品整理業者の選び方を参考に、早めに動き出してください。相続放棄を考えている場合は、遺品に手をつける前に相続放棄と遺品整理の注意点も確認しておくと安心です。
福井で相談するなら
生前整理・遺品整理のどちらであっても、物量や財産の内容、家族の状況によって進め方は変わります。判断に迷う場合は、状況を相談フォームからお送りいただければ、生前整理として進めるべきか、遺品整理として業者に依頼すべきかを含めて、進め方の整理をお手伝いします。品目ごとの処分方法は遺品の処分方法(品目別)にまとめていますので、あわせてご確認ください。
よくある質問
生前整理と遺品整理はどう違いますか?
生前整理は本人が元気なうちに自分の物や財産を整理することで、遺品整理は亡くなったあとに遺族が故人の遺した物を整理することです。生前整理は本人が「何を残すか」を決められ、時間もかけられますが、遺品整理は遺族が故人の意思を推測しながら、退去や相続の期限に追われて進めることになります。
生前整理と遺品整理はどちらをやるべきですか?
親が元気なら生前整理を本人と一緒に進めるのがすすめられます。すでに要介護や判断力の低下がみられる場合は、できる範囲の生前整理と成年後見の検討を専門家に相談します。すでに他界している場合は遺品整理を進めます。状況によって選ぶものであり、どちらか一方だけが正解というわけではありません。
生前整理のメリット・デメリットは何ですか?
メリットは、本人が残すものを決められる、家族の負担が小さくなる、贈与税の基礎控除(年110万円)の範囲で気持ちよく財産を渡せることです。デメリットは、体力・気力・判断力が要る作業であることと、時間がかかることです。健康寿命(男性72.57年・女性75.45年)を過ぎると作業が負担になりやすくなります。
判断力が落ちてからでは生前整理はできませんか?
認知症などで判断能力が低下すると、本人が単独で財産の処分や贈与を進めることが難しくなり、家庭裁判所を通じた成年後見が必要になることがあります。任意後見は判断能力があるうちに本人が契約で決めておく制度、法定後見はすでに判断能力が低下したあとに家庭裁判所が後見人等を選ぶ制度です。判断に迷う場合は司法書士や弁護士、家庭裁判所に相談してください。
生前整理で家族に物や財産を渡すとき、税金はかかりますか?
1人が1年間に受け取る財産の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。家具や衣服など生活に通常必要な動産の譲渡による所得は非課税ですが、1個または1組30万円を超える貴金属・宝石・骨とうなどは譲渡所得の課税対象になります。個別の判断は税務署や税理士に確認してください。


