遺品整理で通帳が出てきたら|口座凍結と引き出しの注意点

公開:2026.09.17更新:2026.09.17杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
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遺品整理をしていると、引き出しや金庫から故人名義の通帳やキャッシュカードが出てくることがあります。「口座はもう凍結されているのか」「暗証番号が分かるから、生活費として少し使ってもいいのか」と、手が止まる方は少なくありません。

結論を先に言うと、通帳に記載された預貯金は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有財産です。見つけた人1人の判断で引き出すことは原則としてできません。

この記事では、通帳やキャッシュカードが出てきたときにまずやるべきこと、口座凍結の考え方、勝手に引き出してはいけない理由、相続放棄を考えている場合の注意点を、法務省・国税庁の情報にもとづいて整理します。

遺品整理で通帳・キャッシュカードが出てきたらまずやること

通帳やキャッシュカードを見つけたら、開けてすぐATMに向かうのではなく、次の順番で進めます。

見つけた通帳、まずやること

1. 写真を撮る。 通帳の表紙、口座番号が分かるページ、直近の残高が分かるページを撮っておきます。

2. 残高・口座番号・金融機関名を記録する。 メモだけでなく、写真とセットで残しておくと、あとで確認しやすくなります。

3. 相続人全員に速やかに共有する。 見つけた事実を、他の相続人にできるだけ早く伝えます。口頭だけでなく、写真をメールやメッセージアプリで送っておくと記録が残ります。

4. 単独で引き出さない。 暗証番号やキャッシュカードを持っていても、その場で引き出さないでください。

現金・タンス預金が同時に見つかった場合の記録・保管の実務は遺品整理で現金が出てきたらにまとめています。通帳もこの現金・貴重品の一部として、同じ考え方で扱います。

通帳が複数出てきた場合も、同じ手順を1冊ずつ繰り返します。 取引のある金融機関が複数あると分かった時点で、一覧表にしておくと、あとの相続手続きがスムーズになります。ネット銀行のように紙の通帳がない場合は、ログイン情報や取引通知のメール、キャッシュカード・トークンの現物を記録の対象にします。

記録と共有ができたら、次はなぜ「1人の判断で引き出せない」のか、その根拠を確認します。

預貯金は「相続人全員の共有」(遺産分割が終わるまで)

法務省は、相続財産の扱いについて次のように説明しています。

相続財産は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有となる(民法898条)。預貯金債権も遺産分割の対象であり、相続人が単独で全額を引き出すことは原則としてできない。

つまり、通帳に記載された預貯金は、遺産分割協議が終わるまで、相続人全員のものです。同居していた家族であっても、見つけた人であっても、1人だけで全額を引き出す権利はありません。

預貯金は誰のもの?

遺産分割前と後で、預貯金の扱いは次のように変わります。

段階預貯金の扱い
遺産分割前相続人全員の共有財産。単独での全額引き出しは原則できない
遺産分割後分割協議の内容に従って、各相続人それぞれのものになる

この原則が分かると、次に気になるのは「では、口座はいつ凍結されるのか」という点です。

口座はいつ凍結される?

口座凍結の具体的なタイミング(死亡届の提出で自動的に止まるのか、金融機関が名義人の死亡を把握した時点で止まるのかなど)については、金融機関ごとに実務が異なり、本サイトで検証済みの一次情報がありません。ここでは断定的な説明を避けます。

一般的には、多くの金融機関は名義人の死亡を把握すると、口座の取引を制限する運用をとっているとされています。凍結後は、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員の同意書などをそろえないと引き出せなくなるのが通例です。

葬儀費用などで急ぎ資金が必要な場合、遺産分割前でも一定額まで預貯金を扱える制度があるとも言われていますが、上限額や計算方法について本サイトで検証済みの一次情報がないため、ここでは金額を示しません。詳しい条件は、口座のある金融機関、または法務局・弁護士に直接確認してください。

すでに凍結される前にATMで一部を引き出していた、というケースもあります。この場合も、慌てて隠さず、いつ・いくら引き出して何に使ったかを記録し、相続人全員に説明できるようにしておくことが大切です。凍結の有無にかかわらず、記録を残す姿勢は同じです。

凍結の有無やタイミングにかかわらず、そもそも「なぜ勝手に引き出してはいけないのか」を確認しておきます。

1人で勝手に引き出してはいけない理由(相続財産にあたる)

国税庁は、相続税がかかる財産について次のように説明しています。

相続税は、被相続人が死亡の時において所有していた財産にかかる。現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものが相続財産に含まれる。

通帳の預貯金も、この相続財産の一部です。相続財産である以上、次のような行動はトラブルのもとになります。

  • 1人で使う。 生活費や葬儀費用の立て替えに充てたくなっても、相続人全員の合意より先に使わない
  • 他の相続人に黙って引き出す・隠す。 あとで発覚すると、遺産分割協議そのものが難航する
  • 記録を残さず引き出す・費消する。 何にいくら使ったかが分からないと、他の相続人からの疑いを解消できない

凍結される前に引き出せたとしても、他の相続人に無断で行うと、あとで「使い込みではないか」というトラブルに発展しかねません。金額の大小に関わらず、これらの行動は他の相続人との信頼関係を損ないます。相続財産が大きくなりそうな場合、相続税の基礎控除の考え方は遺品整理で現金が出てきたら、財産を売却するときの税金は遺品整理と売却の税金にまとめています。

ここまでは相続することを前提にした話です。相続放棄を考えている場合は、事情が少し変わります。

相続放棄を考えているなら、引き出す前に

借金や連帯保証の有無がまだはっきりしていない、あるいは相続放棄を考えている場合は、通帳の預貯金に手をつけないことが何より大切です。

相続放棄の手続きに関わる法律事務所の解説では、次のように説明されています。

相続財産を売却したり処分したりしたときには、それだけで単純承認をしたとみなされることがある(法定単純承認・民法第921条)

口座から引き出して使う行為は、この「処分」にあたる可能性があります。放棄するかどうかまだ決めていない段階でも、通帳やキャッシュカードはそのまま保管し、先に司法書士・弁護士に相談するのが安全です。相続放棄そのものの手続きと期限、片付けで放棄できなくなる行為・影響しない行為の詳しい線引きは、遺品整理と相続放棄にまとめています。

福井で実際に相談する場合の窓口を、最後に整理します。

福井で相談するなら(金融機関・司法書士・弁護士)

通帳の扱いで判断に迷ったときは、次の窓口が相談先になります。

  • 口座のある金融機関 凍結のタイミング、必要書類、緊急時の対応窓口は、まず取引店に確認するのが確実です
  • 司法書士 相続登記や遺産分割協議書の作成、相続放棄の申述書類の準備を相談できます
  • 弁護士 相続人間で意見が分かれている、借金の有無がはっきりしないなど、判断が難しいケースの相談先です

いずれの窓口でも、通帳の写真・記録・相続人全員の連絡先をまとめておくと、相談がスムーズに進みます。相続人が福井県内と県外に分かれている場合も、まずは記録を共有してから、誰がどの窓口に連絡するかを決めておくと二度手間になりません。

通帳と一緒に現金や貴重品、遺言書らしき封筒が見つかることもあります。現金・貴重品の扱いは遺品整理で現金が出てきたら、遺言書が見つかった場合の対応は遺品整理で遺言書が見つかったらにまとめています。相続放棄と通帳の扱いで判断に迷う場合は、状況を相談フォームからお送りください。専門家への相談が必要なケースかどうかも含めて、進め方のめやすをお伝えします。

よくある質問

遺品整理で通帳が出てきたら、まず何をすればいいですか?

その場で開けずに引き出したりせず、まず通帳の表紙・口座番号・残高が分かるページを写真に撮り、記録します。次に、その事実を相続人全員に速やかに共有してください。1人で判断して動かないことが最も大切です。

故人の口座はいつ凍結されますか?

多くの金融機関は、名義人の死亡を把握すると口座の取引を制限する運用をとっていることが一般的とされています。ただし、死亡届の提出で自動的に止まるのか、金融機関が死亡を把握した時点で止まるのかなど、タイミングの詳細は金融機関ごとに異なります。取引のある金融機関に直接確認してください。

暗証番号が分かるので、勝手に引き出してもいいですか?

できません。故人名義の預貯金は相続財産で、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有財産です。暗証番号やキャッシュカードを持っていても、1人の判断で引き出すことは原則としてできません。

葬儀費用など、急いでお金が必要なときはどうすればいいですか?

遺産分割前でも一定の条件で預貯金を扱える制度があるとされていますが、上限額や計算方法について本サイトで検証済みの一次情報がないため、ここでは金額を示しません。急ぎ資金が必要な場合は、口座のある金融機関、または法務局・弁護士に直接相談してください。

相続放棄を考えている場合、口座から引き出しても大丈夫ですか?

引き出さないでください。相続財産を処分すると単純承認とみなされ、原則として相続放棄ができなくなるおそれがあります(法定単純承認・民法921条)。放棄するかどうか決めていない段階でも、口座には手をつけず、先に弁護士・司法書士へ相談するのが安全です。

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