遺産分割調停の申立て方法|どこに・誰が・何を持っていくか

公開:2026.09.29更新:2026.09.29杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
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実家の遺品整理を兄弟姉妹で進めるうちに、「誰が何を取るか」の話し合いがまとまらなくなることがあります。兄弟で進める遺品整理でも触れたとおり、遺産分割が終わるまで遺品は相続人全員の共有財産で、話がこじれたときの選択肢のひとつが家庭裁判所の遺産分割調停です。

調停と聞くと身構えてしまいますが、話し合いの延長線上にある手続きです。ここでは、申立てができる人、申立先の家庭裁判所、必要な書類、調停の流れ、そして話し合いがまとまらなかった場合にどうなるかを、裁判所の公式情報にもとづいて整理します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、相続人の間で遺産の分け方の話し合いがまとまらないときに利用できる、家庭裁判所の手続きです。裁判所の説明では、被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人の間で話し合いがつかない場合に、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続きを利用できるとされています。

裁判というと対立を思い浮かべがちですが、調停は話し合いの場を家庭裁判所に移す手続きです。当事者どうしが直接向き合うのではなく、調停委員を交えて、それぞれの言い分を整理しながら解決案を探ります。感情的になって話が進まなくなったときほど、第三者を挟む意味があります。

遺産の分け方を決める手順には、大きく3つの段階があります。まず相続人どうしが直接話し合う遺産分割協議、それでまとまらないときに裁判所を交えて話し合う遺産分割調停、調停でも決着しないときに裁判官が判断する審判です。今どの段階にいるのかを整理しておくと、次に何をすべきかが見えやすくなります。

段階決め方合意の要否
遺産分割協議相続人どうしの直接の話し合い相続人全員の合意が必要
遺産分割調停家庭裁判所・調停委員を交えた話し合い相続人全員の合意が必要
審判裁判官が事情を考慮して判断合意は不要(裁判官が決定)

まず押さえておきたいのは、誰がこの手続きを始められるのかという点です。

申立てができる人

調停は、相続人のうちの1人、または何人かが、他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。自分だけで一方的に何かを決めるための手続きではなく、他の相続人全員を当事者として巻き込む点が特徴です。

相続人以外にも、遺言によって遺産の一部を受け取る立場にある人などが関わるケースもあります。だれが申立てできるか、だれを相手方にすべきかの判断が難しいと感じたら、申立書を用意する前に家庭裁判所の窓口や弁護士・司法書士に確認しておくと、書類の作り直しを避けられます。

申立ての段階で相続人の人数や範囲がはっきりしていないと、あとから相手方を追加する手間が発生します。遺言書が見つかったときや、相続人に判断がつかない人がいる場合は、先に相続人の確定を済ませてから申立ての準備に入ると、手戻りを防げます。

申立てができる人が分かったら、次はどこの家庭裁判所に申し立てるかです。

申立先の家庭裁判所

遺産分割調停の流れ

申立先は、相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所です。

ここで注意したいのが、相続放棄の申述先とは基準が違うという点です。相続放棄の申述先は「被相続人(亡くなった方)の最後の住所地」の家庭裁判所ですが、遺産分割調停は「相手方(他の相続人)の住所地」が基準になります。相手方が福井県内に住んでいるか、県外に住んでいるかによって申立先が変わるため、自己判断で決めず、福井家庭裁判所のウェブサイトで管轄を確認してから書類を準備してください。相続放棄・限定承認・相続財産清算人を含めた申立先の基準の違いは、相続の手続き、申立先はどこ?で一覧にしています。

相続人が複数の都道府県に散らばっている場合、相手方のうち誰の住所地を基準にするかで、申立先の家庭裁判所が変わってきます。あらかじめ相手方全員の住所を確認し、当事者どうしで「どこの家庭裁判所にするか」を合意できれば、その家庭裁判所に申し立てることもできます。相手方が遠方に住んでいる場合ほど、この合意ができるかどうかで手続きの進めやすさが変わります。

申立先が決まったら、いよいよ書類の準備です。

必要書類

遺産分割調停の申立てに必要な書類

申立てに必要な書類として、裁判所は次のものを案内しています。

  • 遺産分割調停申立書
  • 当事者目録(相続人全員の氏名・住所などをまとめたもの)
  • 遺産目録(土地・建物・現金や預貯金・株式など、種類ごとに分けて記載)
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書(申立人用)
  • 送達場所等届出書

これらに加えて、被相続人と相続人全員の戸籍謄本等を提出します。ここで見落とされやすいのが、戸籍謄本には有効期限があることです。東京家庭裁判所の案内では、当事者(相続人)の戸籍謄本等は3か月以内に発行されたものが必要とされています。早めに取り寄せすぎると、申立て時には期限切れになっていることもあるため、提出のタイミングを見ながら集めます。

被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる作業は、本籍地を転々としていた場合ほど手間がかかります。本籍地が福井県外に複数またがっている場合は、それぞれの市区町村役場に個別に請求する必要があり、郵送でのやり取りだけでも時間がかかります。余裕を持って準備を始め、発行から3か月の期限内に申立てまで終えられるよう、収集のタイミングを逆算しておくと安心です。収入印紙・郵便切手など申立てにかかる実費の具体額は、裁判所の書式ページで案内されているダウンロード資料を確認してください。

書類がそろったら、実際の手続きの流れを見ていきます。

調停の流れ

申立書一式を家庭裁判所に提出すると、手続きが始まります。調停は、当事者が一度に結論を出す場ではなく、期日を重ねながら解決案を探っていく手続きです。

調停の期日では、調停委員が申立人・相手方それぞれの言い分や事情を個別に聞き取り、双方が納得できる分け方を探ります。当事者どうしが顔を合わせずに済む運用がとられることも多く、感情的な対立が強い場面でも話し合いを進めやすくなっています。話し合いがまとまれば、その内容で調停が成立し、遺産分割協議書に代わる調停調書が作られます。

1回の期日ですべてが決まるとは限りません。不動産の評価方法、預貯金の使い込みの有無、生前贈与の扱いなど、論点が複数あるほど期日を重ねる回数も増えます。期日のたびに、それまでの話し合いを踏まえた資料や考えを整理しておくと、次の期日をスムーズに進められます。遺品整理で出てきた現金や通帳の記録も、話し合いの材料として役立ちます。

一方で、期日を重ねても折り合いがつかないことがあります。その場合にどうなるかを、次に見ていきます。

話し合いがまとまらないと、自動的に審判へ移行する

調停で話し合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きが開始されます。申立てをやり直す必要はなく、同じ家庭裁判所の中で手続きが引き継がれます。

審判では、裁判官が、遺産に属する物や権利の種類・性質、それまでの話し合いの経緯など一切の事情を考慮して、遺産の分け方を決定します。調停が「当事者どうしの合意」を目指す手続きであるのに対し、審判は裁判官が結論を出す手続きという違いがあります。

審判でどのような結論になるかは、個別の事情に大きく左右されます。この記事で見通しを断定することはできないため、審判に進みそうな状況になったら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

審判に不服がある場合には、さらに上級の裁判所に不服を申し立てる手段も用意されています。ただし、手続きが長期化するほど、相続人それぞれの負担も大きくなります。審判まで進む前に、調停の期日の中で歩み寄れる点がないか、専門家の助言を受けながら探っておく価値は十分にあります。

弁護士・司法書士に相談すべきケース

次のような状況では、申立ての準備を自分たちだけで進めようとせず、早めに弁護士や司法書士に相談してください。

  • 相続人の人数が多く、連絡がつかない・関係が疎遠な人がいる
  • 不動産など、評価額の算定が難しい財産が含まれている
  • すでに一部の相続人が遺品や財産を処分していて、相続放棄や遺産に含まれる現金の扱いが絡んでいる
  • 感情的な対立が強く、直接の話し合いがこれ以上進まない

弁護士は申立書の作成から期日への出席まで代理できます。司法書士も、書類作成のサポートという形で関われる場合があります。福井県内で相談先を探す場合も、まずは福井家庭裁判所のウェブサイトで手続き案内を確認し、必要に応じて弁護士会や司法書士会の相談窓口を利用してください。

基本情報のまとめ

項目内容
制度相続人間の話し合いがまとまらないときに使う家庭裁判所の手続き
申立てができる人相続人のうちの1人または何人か(他の相続人全員を相手方とする)
申立先相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所、または合意した家庭裁判所
主な必要書類申立書・当事者目録・遺産目録・事情説明書・戸籍謄本等(3か月以内発行)
期限申立て自体に期限はない(ただし相続税の申告期限などは別途あり)
まとまらない場合自動的に審判へ移行し、裁判官が分け方を決定する

遺産分割調停は、話し合いが行き詰まったときに使える制度であって、対立をあおるための手続きではありません。ここに至る前に、兄弟で進める遺品整理で紹介した役割分担や記録の残し方を先に試しておくと、調停まで進まずに解決できることもあります。形見分けや現金・貴重品の扱いなど、個別の論点で迷っている場合は、そちらもあわせて参照してください。

申立てを検討している、あるいはどこに相談すればよいか分からないという場合は、状況を相談フォームからお送りください。専門家への相談が必要な段階かどうかも含めて、整理のお手伝いをします。

よくある質問

遺産分割調停とはどんな手続きですか?

相続人の間で遺産の分け方の話し合いがまとまらないときに利用できる、家庭裁判所の手続きです。話し合いの延長として、調停委員を交えて解決案を探ります。調停が不成立になると、自動的に審判手続きが始まり、裁判官が遺産の分け方を決めます。

遺産分割調停は誰が申し立てられますか?

相続人のうちの1人、または何人かが、他の相続人全員を相手方として申し立てます。単独の相続人が勝手に手続きを進めるものではなく、相手方には他の相続人全員を指定する必要があります。

遺産分割調停はどこの家庭裁判所に申し立てますか?

相手方となる相続人のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所です。相続放棄の申述先(被相続人の最後の住所地)とは基準が異なるため、福井県内で申し立てる場合も、まず裁判所のウェブサイトで管轄を確認してください。

遺産分割調停に必要な書類は何ですか?

遺産分割調停申立書、当事者目録、遺産目録(土地・建物・現金や預貯金・株式などの種類ごと)に加えて、事情説明書、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書などが必要です。あわせて、被相続人と相続人全員の戸籍謄本等も提出しますが、3か月以内に発行されたものが求められます。

話し合いがまとまらないとどうなりますか?

調停が不成立になると、自動的に審判手続きに移行します。裁判官が、遺産の種類や性質、それまでの経緯など一切の事情を考慮して、遺産の分け方を決定します。審判の見通しを自分で判断するのは難しいため、早めに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

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