相続した実家を売ろうとして、まず気になるのが税金です。売却で利益が出ると譲渡所得として税金がかかりますが、一定の要件を満たせば、この譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
ただし要件は細かく、家屋の築年数や居住状況、売り方、金額、期限のすべてを満たす必要があります。どれか1つでも外れると使えません。ここでは、国税庁の情報にもとづいて要件を一つずつ確認し、福井で進めるときの注意点まで整理します。
相続した実家を売ると「譲渡所得」に税がかかる
このセクションでは、控除の前提となる税金の考え方を確認します。
相続した実家(土地・建物)を売却して利益が出ると、その利益は譲渡所得として所得税・住民税の対象になります。譲渡所得は、売却代金から取得費(購入時の価格など)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて計算します。
不動産の売却でかかる税金と、遺品として残った家財を処分・売却したときの税金は扱いが別です。家具や衣服など生活に通常必要な動産の譲渡による所得は原則非課税ですが、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは課税対象になります。不動産(家屋・敷地)はこの非課税の対象外で、売却益が出れば譲渡所得税の対象です。次のセクションでは、その譲渡所得税を軽くする3000万円特別控除の中身を見ていきます。
一定の要件を満たすと最高3000万円を控除できる
ここが今回のテーマの核心です。
被相続人(亡くなった親など)が住んでいた家屋とその敷地を相続し、要件を満たして売却すると、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できます。令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は、1人あたり2,000万円が上限です。
要件は大きく「家屋の要件」「売り方の要件」「金額・期間の要件」の3つに分かれます。全体像は下の図のとおりで、次のセクションから一つずつ確認していきます。
家屋の要件(昭和56年5月31日以前建築・区分所有でない・単独居住)
対象になる家屋には、建築時期と居住状況の条件があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと(いわゆる旧耐震基準の建物)
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと(マンションなどは対象外)
- 相続の開始の直前において、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと(被相続人が一人で住んでいたこと)
この3つのうち、特に見落とされやすいのが最後の単独居住の条件です。同居していた家族がいた場合は対象になりません。建築年は建築確認済証や登記簿、固定資産税の課税明細などで確認できます。要件を満たしているか判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。次は、実際にどう売るかという要件を見ていきます。
売り方の要件(耐震基準に適合、または家屋を取り壊して売る)
家屋を残して売る場合と、更地にして売る場合とで、それぞれ要件があります。
- 家屋を残して売るなら、譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること(必要なら耐震リフォームをしてから売る)
- 家屋を残さないなら、被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に敷地等を売ること
いずれか一方を満たせば要件はクリアです。古い家屋のまま、耐震性を確かめずに売ることはできません。耐震診断や解体には時間がかかるため、この点はのちほど「早めに動く理由」でもう一度取り上げます。続いて、金額と期間の要件を確認します。
金額・期間の要件(売却対価1億円以下・相続から3年目の年末まで)
売却代金と期限についても条件があります。
- 売却代金が1億円以下であること。相続人が複数いて土地を分割して売る場合は、各相続人の売却代金の合計額で1億円以下かどうかを判定します
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
さらに、特例そのものにも適用期限があります。国税庁の情報では、この特例の適用期限は令和9年12月31日とされています。売却期限と適用期限の両方を意識しておく必要があります。
ここまでの要件を一覧にしたのが次の表です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人3人以上は1人2,000万円) |
| 家屋 | 昭和56年5月31日以前建築、区分所有でない |
| 居住状況 | 相続直前に被相続人が単独で居住 |
| 売り方 | 耐震基準に適合、または取り壊して売る |
| 金額 | 売却対価1億円以下(分割売却は合計で判定) |
| 期限 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 特例の適用期限 | 令和9年12月31日 |
すべての要件を満たしているか不安な場合は、手続きを進める前に税務署や税理士に確認します。要件を確認できたら、次は「いつ動くか」を考えます。
使うなら早めに動く理由(片付け→耐震確認 or 解体→売却で時間がかかる)
3000万円特別控除を使うつもりなら、早く動き始めるほど安全です。理由は、売却までにいくつもの工程があるからです。
実家の片付け(家財の搬出・仕分け)→ 耐震診断や耐震リフォーム、あるいは解体→ 売却の契約・引き渡しという順番で進み、それぞれに日数がかかります。特に耐震リフォームや解体は、業者の見積もりや工事の日程調整だけで数週間から数か月かかることが珍しくありません。実家の片付け方は空き家の片付け方、実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方にまとめています。
期限は「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日」までと決まっており、この日までに売却の契約・引き渡しを終えている必要があります。片付けに手間取ってから解体を検討し始めると、期限に間に合わなくなる恐れがあります。
また、売らずに放置する期間が長くなるほど、別のリスクもあります。空き家が「特定空家等」や「管理不全空家等」に該当し、市区町村長から勧告を受けても改善しない場合、その敷地は固定資産税の住宅用地特例(課税標準額が6分の1に軽減される制度)の対象から除外されることがあります。控除を使うかどうかにかかわらず、実家を空き家のまま放置するほど税負担が重くなる可能性がある点は覚えておいてください。相続そのものにかかる税金や相続登記については実家じまいと相続税・登記、相続登記の義務化については相続登記の義務化で解説しています。続いて、実際に福井で進めるときの窓口を確認します。
福井で進めるとき(除却補助・確定申告)
取り壊して売る場合、福井市には老朽危険な空き家の解体費用を補助する制度があります。老朽危険空き家等除却支援事業では、延べ床面積×5,000円または解体費用の2分の1のうち安いほうで、上限50万円(準老朽・旧耐震基準は上限30万円)が補助されます。跡地を地域で利用する場合は上限100万円です。窓口は福井市建設部住宅政策課(電話0776-20-5571)で、補助の要件や金額は年度により改定されることがあるため、解体を検討する段階で確認します。
売却後、特例の適用を受けるには確定申告が必要です。譲渡所得の計算や添付書類の準備は自分で行うこともできますが、要件への当てはめを誤ると控除が受けられない可能性があるため、税務署や税理士に事前に相談するのが確実です。片付けから解体、売却までの費用の総額感は実家じまいの費用にまとめています。進め方で判断に迷う場合は、相談フォームから状況をお送りください。お名前や電話番号は不要です。
よくある質問
空き家の3000万円特別控除とはどんな制度ですか?
相続した被相続人の居住用財産(空き家)を売ったとき、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できる特例です。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、1人あたり2,000万円が上限です。
家屋の要件は何ですか?
昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物登記がされていないこと、相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと(被相続人が一人で住んでいたこと)が必要です。
家をそのままの形で売ってもいいですか?
家屋を残して売る場合は、譲渡の時点で一定の耐震基準を満たしている必要があります。満たしていなければ、耐震リフォームをするか、家屋を取り壊して更地として売ることになります。
売却の期限はいつまでですか?
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。さらに、この特例そのものの適用期限は令和9年12月31日と定められています。
売却代金が高いと使えませんか?
売却代金が1億円を超えると対象外になります。相続人が複数いて土地を分割して売る場合は、各相続人の売却代金の合計額で1億円以下かどうかを判定します。


