相続放棄の期限|3か月に間に合わないときの「期間の伸長」を知る

公開:2026.10.16更新:2026.10.16杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
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親が亡くなり、「借金があるかもしれない」と分かったとき、まず浮かぶのが相続放棄です。ただ、相続放棄には相続の開始があったことを知った時から3か月という期限(熟慮期間)があり、財産の調査に手間取っているうちに、この期限が目前に迫っていることに気づく方が少なくありません。

相続放棄と限定承認の期限は、どちらも3か月です。3か月で判断がつかない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てることで期間を延ばせます。ただし、この申立て自体にも3か月という期限があり、見落とされやすい落とし穴になっています。

この記事では、相続放棄・限定承認の期限の考え方、期間の伸長の申立て方法、そして期限が迫るなかでの遺品整理の進め方を、裁判所の公式情報にもとづいて整理します。相続放棄をするかどうかの判断基準や手続き全体は遺品整理と相続放棄、相続まわりの他の期限は相続手続きの期限一覧にまとめているので、ここでは「3か月の期限」と「期間の伸長」にしぼって説明します。

相続放棄・限定承認の期限は「相続の開始を知った時から3か月」

相続が始まると、相続人は財産を「相続する」か「相続しない」かを決めなければなりません。裁判所の案内によれば、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかをしなければならないとされています。

この3か月を「熟慮期間」と呼びます。何もしないまま熟慮期間が過ぎると、原則としてすべての財産(プラスもマイナスも)を受け入れる「単純承認」をしたものとして扱われます。借金の有無が分からないまま3か月が過ぎてしまうと、あとから放棄できなくなるおそれがあるため、まずこの3か月という期限を正しく認識することが出発点になります。

とはいえ、3か月で財産の全体像が見えないことは珍しくありません。次に、決められないときの対処を見ていきます。

3か月で決められないときは「期間の伸長」を申し立てる

相続放棄・限定承認の期限と、期間伸長の関係

裁判所の案内では、熟慮期間内に相続財産の状況を調査しても、なお単純承認・限定承認・相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には、家庭裁判所が申立てにより熟慮期間を伸長できるとされています。

遠方の不動産がある、取引先や金融機関からの回答待ち、相続人が多く連絡に時間がかかる——こうした事情で3か月以内に財産調査が終わらないケースは少なくありません。そのようなときに使えるのが、この「期間の伸長」の申立てです。認められれば、熟慮期間そのものが延びるため、落ち着いて財産を調べ直せます。

ただし、申立てをいつまでにすればいいのかが、次の落とし穴になります。

伸長の申立ては3か月以内にしないといけない

ここが最も見落とされやすい点です。裁判所の案内は「申立ては,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります」と明記しています。

つまり、熟慮期間が過ぎてから「まだ決められないので伸長してほしい」と申し立てることはできません。3か月というタイムリミットは、放棄や限定承認を選ぶ期限であると同時に、「迷っているので伸ばしてほしい」と申し立てる期限でもあるのです。

財産調査が難航しているときほど、「まだ余裕がある」と感じて動き出しが遅れがちです。目安として、3か月のうち残り2〜3週間の時点で判断に迷っているなら、伸長の申立てを検討するのが安全です。期限ぎりぎりになって慌てて動くと、必要な書類がそろわないこともあります。

では、実際に申し立てる場合、どのような流れになるのでしょうか。

申立ての流れと、裁判所からの照会

3か月で決められないときの分岐

期間の伸長を申し立てる先は、相続放棄や限定承認と同じ家庭裁判所です。裁判所は申立書の記入例を公開しており、そこには次のような注意が記されています。

裁判所の案内によれば、申立てを受けた家庭裁判所は、判断するためにさらに書面で照会したり、直接事情をおたずねする場合があるとされています。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じるよう案内されています。郵便物を見落としたり、連絡先を変更したまま放置したりすると、手続きが滞る原因になります。申立て後も、裁判所からの連絡を見落とさないようにしてください。

必要な書類の細部や収入印紙の額など、申立書の具体的な記入内容は家庭裁判所の窓口で確認するのが確実です。福井県内での申立先は、後述する家庭裁判所のまとめページで確認できます。

申立てを検討している間、もう一つ知っておきたいのが「限定承認」という選び方です。

限定承認という選び方と、その期限

借金の額がはっきりしないものの、財産が残る可能性もある場合には、限定承認という方法があります。相続した財産の範囲内でだけ借金を支払う方法で、プラスの財産が残れば相続でき、マイナスが多ければその分は負いません。

裁判所の案内では、限定承認の申述も民法により、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています。さらに、この3か月以内に財産の状況を調査してもなお承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合は、相続放棄と同じく期間の伸長の申立てによって、家庭裁判所がその期間を伸ばすことができるとされています。期限の考え方は相続放棄とそろえて理解しておくと整理しやすくなります。限定承認の手続きそのものについては限定承認とはで詳しく解説しています。

財産の分け方そのもので相続人の意見がまとまらない場合は、遺産分割調停という選択肢もあります。期限のある手続きと並行して検討することになります。

ここまでで期限と伸長の仕組みは整理できました。続いて、この期限が迫っている間、遺品整理をどう進めるかを見ていきます。

期限が迫っているときに、遺品整理はどうするか

相続放棄や限定承認を検討している間は、遺品整理の進め方にも注意が必要です。財産的価値のある家電・家具・貴金属などを処分したり売却したりすると、法律上「相続を受け入れた」とみなされ、あとから放棄できなくなるおそれがあります。これは期限内であっても起こり得る問題です。

迷っている段階では、財産に手をつけずに調査を優先するのが基本です。片付けで放棄できなくなる行為・影響しない行為の詳しい線引きは遺品整理と相続放棄にまとめています。遺品整理そのものを始める時期の考え方は遺品整理はいつから始める?で解説しているので、相続放棄の判断と並行して確認してください。

財産調査にどうしても時間がかかりそうなときは、片付けを進める前に、期間の伸長の申立てを検討するタイミングだと考えてください。判断に迷う状況や、賃貸の退去期限など事情が重なっている場合は、相談フォームから状況をお送りいただければ、どの順番で進めるべきかの整理をお手伝いします。

福井で相談するなら(家庭裁判所・専門家)

相続放棄・限定承認・期間の伸長の申立先は、原則として故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。福井県内の申立先(福井家庭裁判所 本庁・武生支部・敦賀支部)の所在地は、相続の手続き、申立先はどこ?にまとめています。

期限の起算点(「相続の開始があったことを知った時」)の判断は事案によって異なり、期間の伸長が認められるかどうかも個別の事情によります。自分のケースで何が起算日になるか、伸長が認められそうかといった判断は、家庭裁判所や弁護士・司法書士に確認してください。

遺品整理と相続放棄の順序で迷っている、期限が迫っているのに財産調査が終わらない、というときは、相談フォームから状況をお送りください。相続放棄そのものの手続きや、相続まわりの他の期限とあわせて、進め方の整理をお手伝いします。

よくある質問

相続放棄の期限はいつまでですか?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。多くの場合、故人の死亡を知った日が起算日になります。限定承認も同じく3か月です。

3か月以内に判断できないときはどうすればいいですか?

財産の状況を調査してもなお判断できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、熟慮期間を延ばせます。認められるかどうかは個別の事情によるため、早めに申し立てることが大切です。

期間の伸長の申立てそのものにも期限はありますか?

あります。伸長の申立ては、相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります。3か月を過ぎてから伸長を申し立てることはできないため、迷っている段階で早めに動くことが欠かせません。

限定承認にも3か月の期限はありますか?

あります。限定承認の申述も、相続の開始があったことを知った時から3か月以内と定められています。3か月で判断できない場合は、相続放棄と同じく期間の伸長を申し立てられます。

期限が迫っているとき、遺品整理を進めてもいいですか?

相続放棄や限定承認を検討している間は、家財道具など財産的価値のあるものの処分は避けてください。処分の仕方によっては、法律上「相続を受け入れた」とみなされ、あとから放棄できなくなるおそれがあります。詳しい線引きは、個別事情によって変わるため専門家に確認してください。

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