相続放棄しても実家(空き家)の管理義務は残る?同居の有無で違う

公開:2026.09.20更新:2026.09.20杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
相続放棄しても実家(空き家)の管理義務は残る?同居の有無で違うのイメージ

「実家の相続放棄をすれば、もうあの家とは無関係になれる」——そう思って手続きを進めようとしていませんか。結論から言うと、放棄したからといって、その瞬間にすべての責任がなくなるわけではありません。特に故人と同居していた相続人には、放棄後も一定の保存義務が残ることがあります。

この記事では、2023年(令和5年)の民法改正後のルールにもとづき、相続放棄をしたあとの実家(空き家)の管理責任がどうなるのかを、同居していたかどうか・他に相続人がいるかどうかで整理します。相続放棄の手続き自体や3か月の期限については遺品整理と相続放棄にまとめているので、ここでは「放棄したあと」に絞って解説します。

相続放棄をすれば、実家(空き家)と無関係になれるのか

放棄しても油断できない期間のタイムライン

相続放棄は、家庭裁判所に申述することでプラスの財産もマイナスの借金も一切引き継がない手続きです。手続きが認められれば、その人は「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。

ただし、実家という不動産が残っている場合の扱いは少し複雑です。放棄した瞬間に家の管理責任がすべて消えるわけではなく、次に誰が管理するかが決まるまでの間、一定の責任が残ることがあります。この考え方は、2023年4月の民法改正で整理されました。次のセクションで、具体的にどう変わったのかを見ていきます。

2023年(令和5年)民法改正後のルール。保存義務が残るケース

2023年4月の民法改正で、相続放棄後の管理義務のルールが整理されました。ポイントは次の2つです。

  • 他に相続人がいる場合 その相続人に財産を引き渡せば、責任は終わります
  • 被相続人と同居していた相続人 相続放棄をしたあとも、次の管理者が決まるまで一定の保存義務を負うことがあります

つまり、「誰が実家に住んでいたか」が、放棄後の責任の重さを左右します。同居していなかった相続人と、同居していた相続人とでは扱いが違う、という点をまず押さえておく必要があります。次のセクションで、同居していた場合の注意点を詳しく見ていきます。

同居していた相続人には保存義務が残ることがある

故人と同居していた相続人が相続放棄をした場合、そのまま何もしなくてよいわけではありません。次の管理者(他の相続人、または後述の相続財産清算人)が決まるまでの間、実家を保存しておく義務が残るとされています。

保存義務の具体的な範囲、つまり「どこまでの管理行為が求められるのか」「怠った場合にどのような責任を問われるのか」については、検証済みの一次情報に条文レベルの詳細がありません。少なくとも、倒壊や被害を防ぐための最低限の管理は求められると考えられますが、断定はできません。同居していた実家で相続放棄を考えている場合は、片付けや管理の判断を自己流で進めず、早めに弁護士・司法書士に確認してください。

なお、片付けの途中で財産的価値のあるものを処分してしまうと、相続放棄そのものができなくなる可能性があります。この線引きは遺品整理と相続放棄で詳しく解説しているので、あわせて確認してください。相続放棄をせずに、使わない土地だけを国に引き渡したい場合は相続土地国庫帰属制度も選択肢になります。

同居していなかった場合は、また違う扱いになります。

他に相続人がいる場合は、財産を引き渡せば責任が終わる

同居していなかった相続人が放棄したケースや、同居していた相続人であっても他に相続人がいるケースでは、その他の相続人に財産を引き渡すことで責任が終わると整理されています。

たとえば、実家に同居していた親と、遠方で別世帯を持つ兄弟がいた場合を考えます。同居していた側が先に放棄し、遠方の兄弟がまだ相続人として残っているなら、実家の鍵や状況を伝えて引き渡すことで、同居していた側の責任は区切りがつきます。ただし、引き渡し先の相続人がその後どう対応するか(相続するか、さらに放棄するか)によって、状況は変わり続けます。

問題は、相続人が誰もいなくなった場合です。

相続人全員が放棄した場合は「相続財産清算人」の選任を申し立てる

相続放棄後の管理責任の分岐(同居の有無・他の相続人の有無)

相続人が全員相続放棄すると、実家を含む財産を引き継ぐ人がいなくなります。この場合は、家庭裁判所に相続財産清算人(2023年の改正前は「相続財産管理人」と呼ばれていました)の選任を申し立てます。

相続財産清算人が選任されると、その清算人が財産の調査・管理・処分を進めます。選任の申立てには家庭裁判所への手続きが必要で、報酬を含めて20万〜100万円程度かかることがあるとされています。この費用は、通常は相続財産の中から充てられますが、財産が乏しい場合は申立人が予納金を負担することもあります。

具体的な申立書類や予納金の金額、審理にかかる期間については、検証済みの一次情報に詳細がないため、ここでは断定しません。相続人全員が放棄する見込みがある場合は、早い段階で家庭裁判所や司法書士・弁護士に相談し、見通しを確認しておくことをおすすめします。申立人・申立先・必要書類・費用の内訳は相続財産清算人の選任手続きにまとめています。

清算人が決まるまでの間、実家をそのまま放置してよいわけではない点にも注意が必要です。

放置すると特定空家等のリスクにつながることも

保存義務が残る期間中、あるいは相続財産清算人が決まるまでの間に実家を放置すると、別のリスクが生まれます。

手入れされずに放置された家が「管理不全空家」や「特定空家等」に該当し、市区町村長から改善の勧告を受けて改善しなかった場合、その敷地にかかる固定資産税の住宅用地特例(課税標準が6分の1に軽減される仕組み)が外れます。特例が外れると、土地の固定資産税が実質的に大きく上がります。

相続放棄をした人がこの固定資産税を負担する義務はありませんが、放置された実家が近隣に悪影響を及ぼすと、保存義務を負う立場として指摘を受ける可能性があります。特定空家等に指定される仕組みの詳細は空き家の固定資産税が上がる仕組みにまとめています。実家を相続して自分で管理・活用する場合の片付け方は空き家の片付け方を参考にしてください。

放棄するかどうかで迷う段階なら、まずは専門家への相談先を確認しておきます。

相続放棄後の管理責任、状況別の早見表

ここまでの内容を、状況別に整理します。

状況管理責任の扱い
同居していなかった相続人が放棄し、他に相続人がいるその相続人に財産を引き渡せば責任が終わる
同居していた相続人が放棄し、他に相続人がいる引き渡すまでの間、一定の保存義務が残ることがある
相続人が全員放棄した家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる(費用は報酬含め20万〜100万円程度が目安)
保存義務が残る期間中に実家を放置した管理不全空家・特定空家等に該当し、勧告を経て固定資産税の特例が外れるリスク

いずれの状況でも、個別の事情によって判断が変わるため、表はあくまで全体像をつかむための整理として使ってください。

福井で相談するなら(家庭裁判所・弁護士・司法書士)

相続放棄の申述先は、原則として故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。福井県内であれば、福井市・坂井市などは福井家庭裁判所(本庁)、越前市・鯖江市などは武生支部、敦賀市・小浜市などは敦賀支部が管轄になります。相続放棄後の保存義務や相続財産清算人の選任についても、同じ家庭裁判所が窓口になります。

  • 相続放棄の要否、保存義務の範囲、実家を放置した場合のリスクは、個別の事情(同居の有無・他の相続人の有無・財産の状況)によって大きく変わります。判断を急がず、必ず弁護士・司法書士に相談してください
  • 相続する場合の相続税・固定資産税・相続登記については実家じまいと相続税・登記にまとめています
  • 相続放棄の手続き自体、3か月の期限、片付けで単純承認とみなされる行為については遺品整理と相続放棄を確認してください

判断に迷う段階でも構いません。実家の状況(同居していたか、他に相続人がいるか、空き家の状態)を相談フォームからお送りいただければ、どの専門家に相談すべきかの整理をお手伝いします。

よくある質問

相続放棄をすれば、実家の管理からは完全に解放されますか?

必ずしもそうとは限りません。2023年4月の民法改正後、他に相続人がいればその人に財産を引き渡した時点で責任は終わります。ただし、故人と同居していた相続人は、次の管理者が決まるまで一定の保存義務を負うとされています。個別の状況は弁護士・司法書士に確認してください。

同居していなかった相続人が放棄した場合はどうなりますか?

同居していなかった相続人については、他に相続人がいればその人に財産を引き渡すことで責任が終わると整理されています。同居の有無で扱いが変わる点が、このルールのポイントです。

相続人が全員相続放棄したら、実家は誰が管理するのですか?

相続人が誰もいなくなった場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。選任には申立てが必要で、報酬を含めて20万〜100万円程度かかることがあります。清算人が決まるまでの間、保存義務が残る相続人が実質的に管理を担う形になります。

相続財産清算人の選任にはどのくらい費用がかかりますか?

報酬を含めて20万〜100万円程度が目安とされています。具体的な申立書類や審理期間は個別の事情で変わるため、家庭裁判所や司法書士・弁護士に確認してください。

放棄した実家をそのまま放っておくとどうなりますか?

保存義務が残る期間中に空き家を放置すると、管理不全空家や特定空家等に該当し、市区町村長の勧告を受けて改善しないと固定資産税の住宅用地特例が外れるリスクがあります。放棄したからといって管理を止めてよいわけではありません。

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