相続土地国庫帰属制度とは|相続した土地を国に引き渡す条件と費用

公開:2026.09.27更新:2026.09.27杉野龍泉のプロフィール写真監修:杉野龍泉(遺品整理コンサルタント/合同会社CIELIS代表)
相続土地国庫帰属制度とは|相続した土地を国に引き渡す条件と費用のイメージ

親から相続した実家の土地や、離れた場所にある田畑・山林。使う予定がなく、売れる見込みも薄い——そんな土地を、条件を満たせば国に引き渡せる制度があります。相続土地国庫帰属制度です。2023年4月27日に始まり、審査手数料は土地一筆あたり14,000円、承認後に納める負担金は20万円が基本です。ただし、建物が建ったままの土地は申請できません。

この記事では、制度の対象になる人、引き取ってもらえない土地の条件、費用の考え方、そして福井での相談先までを整理します。実家の片付けや解体をどう進めればよいかも含めて解説するので、「何から手をつければいいか分からない」という段階でも読み進められます。

この記事は制度の一般的な仕組みの整理であり、個別の土地が承認されるかどうかを保証するものではありません。実際に申請を検討する場合は、法務局への事前相談を前提に、司法書士・行政書士への依頼もあわせて検討してください。

相続土地国庫帰属制度とは(2023年4月27日から)

相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、その土地を手放して国庫に帰属させることができる制度です。2023年(令和5年)4月27日に始まりました。

対象になるのは、あくまで相続や遺贈によって土地を得た人です。自分で買った土地や、生前に贈与された土地は、この制度の対象にはなりません。次に、よく混同される「相続放棄」との違いを整理します。

相続放棄との違い(相続はして、土地だけ手放す)

相続放棄は、預貯金や不動産などすべての財産を受け継がない手続きです。相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、財産を選んで放棄することはできません。手続きの詳細や、片付けで単純承認とみなされてしまう行為については遺品整理と相続放棄にまとめています。

一方、相続土地国庫帰属制度は、他の財産は相続した上で、使わない土地だけを国に引き渡す制度です。預貯金や実家の家財は通常どおり相続でき、土地だけを手放せる点が、相続放棄との大きな違いです。「どちらが得か」を一概に断定することはできません。財産全体を放棄したいのか、土地だけを整理したいのかで、選ぶ手続きが変わります。次に、この制度を使える人の条件を見ていきます。

申請できる人(共有なら全員で)

申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。相続によって土地の共有持分を取得した共有者は、共有者の全員が共同して申請する必要があります。一人だけの意思で申請することはできません。

また、制度が始まる前に相続していた土地も対象です。制度開始(令和5年4月27日)より前に相続などによって取得した土地についても、この制度の対象になるとされています。すでに何年も前に相続した実家の土地でも、条件を満たせば申請できるということです。

条件を満たせば誰でも申請できる一方で、土地の状態によっては引き取ってもらえません。次に、その条件を見ていきます。

引き取ってもらえない土地(却下・不承認の要件)

相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえない土地の一覧。却下事由5項目と不承認事由3項目を左右に分けて示す

国が引き取れない土地には、申請の段階で却下される土地と、審査の結果として不承認になる土地があります。

却下事由(申請の時点で対象外と判断される土地)は次のとおりです。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、または所有権の存否や範囲について争いがある土地

不承認事由(審査の結果として引き取れないと判断される土地)は次のとおりです。

  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にある土地

却下事由の筆頭に挙げられているのが「建物がある土地」です。実家の土地を考えている人の多くが、まずこの条件に直面します。次に、この点を詳しく見ていきます。

建物が建ったままでは申請できない。家財の片付け→解体が先

建物の登記がされていなくても、現に建物が存在する場合は、申請することはできません。「古い建物で登記していないから大丈夫」という考え方は誤りです。実家に建物が残っている限り、そのままでは相続土地国庫帰属制度の対象になりません。

つまり、実家の土地をこの制度に出すには、次の順番で進める必要があります。

  1. 相続登記を済ませる
  2. 家財の片付け(遺品整理)を終える
  3. 建物を解体して更地にする
  4. 法務局に事前相談し、申請する

実家に長年放置された家財が残っている、建物も古いままという状態で相続した方は少なくありません。この場合、いきなり法務局に相談しても、建物がある限りは対象外と説明されます。まず着手すべきは家財の片付けです。家財の片付けの具体的な進め方は空き家の片付け方にまとめています。福井市には家財の処分や老朽危険空き家の除却を補助する制度もあり、福井市の空き家補助金で条件を確認できます。解体費用や測量費用の相場については、検証済みの一次情報がないため、この記事では具体的な金額を示しません。建物や土地の状況によって大きく変わるため、片付けが終わった段階で解体業者に見積もりを取ることになります。境界が明らかでない土地は却下事由にも該当するため、解体とあわせて境界の確認が必要になる場合もあります。

片付けと解体の見通しが立ったら、次は費用の考え方を確認します。

費用は審査手数料と負担金(20万円が基本)

相続登記から負担金納付までの流れ。家財の片付け→建物の解体→法務局への事前相談→承認申請(審査手数料14,000円)→承認→30日以内に負担金(20万円が基本)を納付する

制度の利用には、大きく分けて2種類の費用がかかります。

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。申請の際に納め、却下や不承認になった場合でも返還されません。

負担金は、承認を受けた後に納める費用です。国有地の種目ごとに、その管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定され、20万円が基本とされています。宅地・田畑・森林など土地の種目によって算定方法が異なる場合があり、法務省のサイトには負担金額の自動計算シート(Excelファイル)が用意されています。具体的な算定式や、個々の土地に当てはめた金額は、この記事では扱いません。実際の負担金は、法務局への相談や自動計算シートで確認してください。

負担金の納付には期限があります。承認の通知を受け取った日の翌日から30日以内に納付する必要があります。期限内に納付しないと、承認の効力が失われる可能性があるため注意が必要です。

費用の目安がついたら、実際にどこへ相談・申請すればよいかを確認します。

福井で相談・申請するなら(福井地方法務局・予約制)

申請先は、承認申請する土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門です。福井県内にある土地であれば、福井地方法務局が窓口になります。

福井地方法務局では、相談はインターネットでの事前予約制です。法務省ホームページの内容を確認したうえで予約する流れになっています。全国の法務局・地方法務局の本局では、令和5年2月22日から対面相談・電話相談の対応が始まっています。

申請書類の作成は自分で行うこともできますが、却下・不承認の要件に該当しないかの見極めや、負担金の算定は専門的な判断を伴います。司法書士や行政書士に申請書類の作成を依頼することも選択肢のひとつです。承認されるかどうかは最終的に法務局の審査によるため、「この土地なら確実に引き取ってもらえる」と自己判断せず、事前相談の段階で状況を伝えることが大切です。

制度の要点まとめ

項目内容
施行日2023年(令和5年)4月27日
対象になる人相続・遺贈で土地を取得した相続人(共有は全員で申請)
対象にならない典型例建物がある土地、担保権付きの土地、境界不明・争いのある土地など
審査手数料土地一筆あたり14,000円(却下・不承認でも返還なし)
負担金20万円が基本(種目により算定方法が異なる場合あり)
負担金の納付期限承認通知受領の翌日から30日以内
申請先土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)
福井県内の窓口福井地方法務局(相談はインターネット予約制)

実家の土地を相続したものの、使う予定がなく、建物も残ったままという方は少なくありません。まずは家財の片付けから始める必要があるケースがほとんどです。実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方に、相続登記の義務化については相続登記の義務化にまとめています。売れる見込みがありそうな土地・建物であれば、国庫帰属より先に売却を検討する余地もあります。流れは空き家を売る流れを参考にしてください。

実家の片付けや解体の見積もりが必要な段階になったら、建物の状態や土地の状況をチャットでの相談からお送りください。お名前や電話番号は不要です。制度の利用が向いているかどうかも含めて、次に相談すべき窓口の整理をお手伝いします。

よくある質問

相続土地国庫帰属制度とはどんな制度ですか?

相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、その土地を手放して国庫に帰属させることができる制度です。2023年4月27日に始まりました。買った土地や、相続以外の方法で得た土地は対象になりません。

建物が建っている土地でも申請できますか?

できません。建物の登記がされていなくても、現に建物が存在する場合は申請できないとされています。申請するには、まず家財の片付けと建物の解体を終える必要があります。

費用はどれくらいかかりますか?

審査手数料が土地一筆あたり14,000円、承認後に納める負担金が20万円が基本です。負担金は土地の種目によって算定方法が変わる場合があり、却下・不承認になっても審査手数料は返還されません。

制度が始まる前に相続した土地も対象になりますか?

対象になります。制度開始(2023年4月27日)より前に相続などによって取得した土地についても、この制度の対象になるとされています。

福井県内の土地はどこに相談・申請すればいいですか?

土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門が窓口です。福井県内の土地であれば福井地方法務局が対象になります。相談はインターネットでの事前予約制です。

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