
親が施設に入所することになった、あるいは入院が長引いている——そんなとき、住む人がいなくなった実家をどうするか、突然の判断を迫られます。売る、貸す、しばらくそのままにする。どれを選ぶにしても、まず確認すべきは親自身の意向です。
厚生労働省の集計では、日常生活に介護を必要とせず過ごせる期間である健康寿命は、令和4年(2022年)時点で男性72.57年・女性75.45年です。この年齢を過ぎると、判断や整理の作業そのものが負担になりやすくなります。実家をどうするかは、親が自分の意思で決められるうちに話しておくことが何より大切です。
まず、親と方針を話す(親が決められるうちに)
実家をどうするか考える出発点は、親自身に「どうしたいか」を聞くことです。子がよかれと思って先回りしても、家や物の所有者は親であり、決定権も親にあります。
厚生労働省によると、令和4年の健康寿命は男性72.57年・女性75.45年で、平均寿命との差は男性8.49年・女性11.63年です。判断力や体力が保たれているうちに話し合っておけば、親の希望を反映できますし、家族が後から悩まずに済みます。施設入居や入院は、こうした話をする自然なきっかけになります。
話すときは、いきなり売却や解体の結論を求めるのではなく、「このまま住み続けたい気持ちはあるか」「思い出の品で残したい物はあるか」といった気持ちの確認から始めると進めやすくなります。判断力が落ちたあとは実家の売却などの契約が本人だけでは進めにくくなるため、その前提となる制度は成年後見制度とはで解説しています。方針が見えてきたら、次は具体的な選択肢を整理します。
実家を「どうするか」の選択肢
実家の扱いには、いくつかの選択肢があります。それぞれ一長一短があり、正解は家庭ごとに違います。
- 住み続ける可能性を残す 施設の暮らしが合わなかったときのために、当面は手をつけずに置いておく
- 賃貸に出す 空き家にせず収入も得られるが、貸し出す前の修繕や管理の手間がかかる
- 売却する まとまった資金になるが、親が戻る選択肢はなくなる
- 解体して更地にする 老朽化が進んでいる場合の選択肢だが、更地後の使い道もあわせて考える必要がある
- 当面は保管する すぐに結論を出さず、管理だけ整えて判断を先送りする
どれを選ぶにしても、売却・賃貸・解体は不動産会社や司法書士、税に関わる判断は税務署や税理士に相談しながら進めるのが確実です。子だけで判断せず、親の意向を軸に、専門家の意見も交えて決めていきます。選択肢が見えたところで、次は「なぜ急いで全部を処分しなくてよいのか」を確認します。
急いで全部処分しない理由
実家が空くと、「早く片付けないと」と焦ってしまいがちですが、急いで全部を処分する必要はありません。理由はいくつかあります。
まず、施設での暮らしが本人に合わず、実家に戻る可能性があることです。家財を早々に処分してしまうと、戻る選択肢そのものがなくなります。次に、気持ちの整理に時間がかかることです。長年暮らした家を一気に片付けるのは、親にとっても子にとっても負担が大きい作業です。
業者に片付けを依頼する場合も同じ考え方が当てはまります。国民生活センターは、処分してよい物と残す物を事前に伝えて合意しておくこと、複数社から見積もりを取り、料金の内訳や作業範囲を契約前に書面で確認することを呼びかけています。急いで一社にまとめて任せるのではなく、親の意向を確認しながら、必要な範囲だけを進めるのが安全です。全部を一度にやろうとせず、先に片付けるべき物から着手します。
先に片付けるもの
全体の片付けを急ぐ必要はありませんが、放置すると困る物だけは先に確保しておきます。
- 生もの 冷蔵庫の中身など、傷んで衛生上の問題になる物
- 貴重品 通帳・印鑑・保険証・年金関係の書類、現金や貴金属
- 重要書類 権利証、保険証券、各種契約書
- 危険物 灯油、ガスボンベ、火の元になりうる物。出し方は遺品・実家の危険物の処分
書類とあわせて、デジタルの契約も見落としやすいところです。国民生活センターは、契約中のサービス名・ID・パスワード・端末のロック解除方法などを整理し、家族が確認できるように安全に保管しておくよう呼びかけています。年金・保険・公共料金・サブスクリプションの契約状況を、親に確認しながら書き出しておくと、後々の手続きがスムーズになります。
大きな家具や不用品をまとめて出す段階になったら、自治体の粗大ごみも選択肢の一つです。福井市の場合、戸別収集は電話0776-35-0052の事前予約制で、手数料は1点あたり小605円・中770円・大935円、1回5点まで、収集は平日のみです。車が残る場合は、先に免許返納と名義・抹消の手続きを済ませておくと後が楽になります(親の運転免許返納)。すぐやることが片付いたら、実家をどう管理するかを次に考えます。
空き家として置くときの管理
当面は保管する、あるいは方針が決まるまで時間がかかる場合、実家は空き家として管理することになります。放置すると、次のような問題が起きやすくなります。
- 通風・通水 換気をしないとカビや湿気が進み、水道管が傷むこともある
- 郵便物の確認 定期的に確認しないとポストが溢れ、重要な通知を見落とすおそれがある
- 近隣への影響 庭木の伸びや外観の傷みが近隣トラブルの原因になることがある
管理を怠った場合の税負担にも注意が必要です。東京都主税局によると、特定空家等・管理不全空家等に該当し、市区町村長から勧告を受けて改善されない場合、その敷地は住宅用地に係る固定資産税の課税標準の特例の適用対象から除外されます。 特例が外れると、その分税負担が増える可能性があるということです。頻繁に見に行けない場合は、空き家管理サービスの利用や、近隣に住む親族への依頼も検討しておくと安心です。実家じまい全体の進め方は実家じまいの進め方、費用の考え方は実家じまいの費用を参考にしてください。管理と並行して、親の生活面の相談先も押さえておきます。
介護・生活の相談は地域包括支援センターへ
実家をどうするかという物理的な判断と並んで、親の介護や生活面の相談窓口を持っておくことも大切です。厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置する機関で、高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行う、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関です。
片付けそのものを代行する窓口ではありませんが、施設の暮らしや今後の生活について困ったときに、まず相談できる場所として心強い存在です。場所が分からない場合は、実家がある市区町村の代表電話に「地域包括支援センターにつないでほしい」と伝えれば案内してもらえます。地域包括支援センターが何をしてくれる窓口かは地域包括支援センターとはで詳しく解説しています。実家がゴミ屋敷のように荒れている場合の相談の進め方は、実家がゴミ屋敷になっていたらにまとめています。
遠方に住んでいる場合の進め方
離れて暮らしていると、実家の状態をこまめに確認できないのが悩みどころです。次のような形で、少しずつ把握を進めます。
- 帰省のたびに、実家の状態を写真で記録しておく
- 貴重品・重要書類の在りかを、親に確認しながら少しずつ把握する
- 地域包括支援センターや近くに住む親族など、キーパーソンを一人決めておく
- 空き家管理は、通風・通水・郵便物の確認を誰がどのくらいの頻度で行うかを先に決めておく
一度に全部を進めようとせず、帰省のたびに少しずつ確認していく姿勢で十分です。頻繁に通えない事情がある場合の詳しい進め方は、実家が遠方にある場合の遺品整理も参考になります。判断に迷ったときは、相談フォームから状況をお伝えいただければ、進め方の整理をお手伝いします。
福井で相談・依頼するなら
福井で実家の片付けや管理を進める場合、相談先は内容によって分かれます。
| 相談内容 | 窓口 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 親の暮らし全般・介護 | 実家がある市町村の地域包括支援センター | 市町村の代表電話から案内を依頼 |
| 大きな家具・不用品の処分 | 福井市 粗大ごみの戸別収集 | 電話0776-35-0052 |
| 家全体の片付け・売却の相談 | 不動産会社・司法書士・税理士 | 内容に応じて選ぶ |
家全体の片付けを業者に依頼する場合は、必ず親の意向を確認したうえで、遺品整理業者の選び方を参考に複数社から見積もりを取ってください。生前整理として少しずつ進める場合は、生前整理はいつから始めるにまとめた手順が役立ちます。
家や財産の処分は、最終的には親自身が決めることです。判断力の低下が心配な場合は、成年後見制度や家族信託を含めて司法書士や弁護士に、税や登記に関することは税務署や法務局に相談してください。どこから手をつければいいか迷う、実家の状況や親の意向を整理したいという場合は、相談フォームからお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
親が施設に入ったら、実家はすぐに片付けたほうがいいですか?
急いで全部を片付ける必要はありません。施設での暮らしが本人に合わず戻る可能性もありますし、家や物の処分は所有者である親が決めることです。先に確保しておきたいのは、貴重品・重要書類・生もの・危険物など、放置すると困る物だけです。家全体の片付けや売却の判断は、方針が固まってからで十分です。
実家を空き家のまま置いておくと、何に気をつければいいですか?
通風・通水や郵便物の確認など定期的な管理が必要です。管理が行き届かず自治体から特定空家等・管理不全空家等として勧告を受け、改善されない場合は、その敷地が固定資産税の住宅用地の特例から外れることがあります。近隣への影響にも注意し、頻繁に見に行けない場合は管理の方法を早めに検討しておくと安心です。
親に代わって実家の売却や解体を決めてもいいですか?
家や財産の処分は、所有者である親が決めることが基本です。子の判断だけで進めると、後で親や他の家族との間でトラブルになりかねません。判断力が低下している場合は、成年後見制度や家族信託の利用を含めて、司法書士や弁護士、家庭裁判所に相談することをおすすめします。
遠方に住んでいて実家に頻繁に通えません。どう進めればいいですか?
帰省のたびに実家の状態を写真で記録し、貴重品や重要書類の在りかを少しずつ把握しておきます。地域包括支援センターや近くに住む親族など、実家に近いキーパーソンを一人決めておくと、急な連絡があったときに動きやすくなります。詳しくは実家が遠方にある場合の進め方も参考にしてください。
福井で実家のことを相談できる窓口はどこですか?
親の介護や生活全般の相談は、実家がある市町村の地域包括支援センターです。市町村の代表電話に「地域包括支援センターにつないでほしい」と伝えれば案内してもらえます。物を出す段階になったら、福井市は粗大ごみの戸別収集(電話0776-35-0052、1点小605円・中770円・大935円)が利用できます。


